長い年月を経てもなおカタチをとどめている建造物が、全国には数多くあります。それらには先人の叡智、技術の粋が結集されており、人々の暮らしの中に溶け込みつつも、現代の建造物にはない独特の存在感を放っています。
そんな土木遺産を多くの方々に知ってもらいたい。そして、土木遺産を後世に伝えるために記録として残しておきたい。そんな想いから、フォトギャラリーコンテンツ『写真で巡る、土木遺産』(本企画)をスタート。
全国にある土木遺産を、フォトグラファーとモデルとともに巡りながら、その建造物の魅力に迫っていきます。6回目の今回は、江ノ島電鉄。
通称 江ノ電は、1902年に竣工。日本における鉄道黎明期の雰囲気を今に伝え、地元密着型の軌道として湘南の風景の一部となっている貴重な土木遺産です。
100年以上経った今もなお、生活の足として、地元の象徴として、地元市民に親しまれています。平成26年には土木学会選奨土木遺産にも認定。
それでは、土木遺産を巡る小旅行へ、いってらっしゃいませ。
江ノ島電鉄(神奈川県 藤沢市、鎌倉市)
古くから湘南地域の観光地である「江の島」「鎌倉」に至る江ノ島電鉄は、 1902(明治35)年に藤沢~江ノ島間が開通し 1910(明治43)年に終点小町まで、全線が開通。
「極楽洞」は極楽寺駅~長谷駅間にある江ノ島電鉄唯一のトンネルで、 1907年の完成、開通以来大きな改造はなく、電気鉄道のトンネルとして 当時の煉瓦造りが残されているのは全国的に稀である。
「龍口寺前交差点」は、第一期開通区間の藤沢~江ノ島駅から鎌倉に向かう際、 併用軌道区間として国道134号(旧道)の線形に合わせたため、 日本の普通鉄道としては最小であるR=28mの「Sカーブ」で敷設された。
このため、江ノ島電鉄の車両は長さ12.5m、連接車構造などオリジナルな構造とならざるを得ず、 昔のどこか懐かしい電車の風景が今も残る要因となっている。
その他にも、関東の駅100選にも選ばれている「極楽寺駅」「鎌倉高校前駅」など ユニークな駅があり、開通以来の鉄道線形もほぼそのままで残り (現在、ほぼ当時のままの路線で営業しているものとしては日本で最古)、 変化の激しい首都圏の都市において、明治期の日本における鉄道の黎明期の雰囲気を今に伝え、 見事に人と車と鉄道が共存する都市型軌道システムを構築する鉄道施設と言える。
WRITTEN by