長い年月を経てもなおカタチをとどめている建造物が、全国には数多くあります。それらには先人の叡智、技術の粋が結集されており、人々の暮らしの中に溶け込みつつも、現代の建造物にはない独特の存在感を放っています。そんな土木遺産を多くの方々に知ってもらいたい。
そして、土木遺産を後世に伝えるために記録として残しておきたい。そんな想いから、フォトギャラリーコンテンツ『写真で巡る、土木遺産』(本企画)をスタート。全国にある土木遺産を、フォトグラファーとモデルとともに巡りながら、その建造物の魅力に迫っていきます。
5回目の今回は、表参道駅から原宿駅までを走る『表参道ケヤキ並木道』。このケヤキ並木は、1921年に明治神宮の参道として整備され、ケヤキ並木を備えた広幅員街路のモデルとなった土木遺産でもあります。
それでは、土木遺産を巡る小旅行のはじまり、はじまり。
表参道ケヤキ並木道(赤坂杉並線)
令和2年度土木学会選奨土木遺産。表参道のシンボルであるケヤキ並木は、もともと明治神宮ができた翌年の1921年に植えられたもの。全長約1km、幅約35.5m。夏至の日の正午に太陽が参道の真上に、また冬至の日には明治神宮の方向から参道の中心を日が昇るよう設計された。
開通当時、まだケヤキ並木はなく、その翌年にケヤキの若木200本が植樹されたと伝えられる。また、ケヤキの成長を鑑みて、電線は開通当時から地中化の造りとなっており、大正時代から未来的な街づくりを行なっていたことが伺える。なお、戦後までは、明治神宮への参拝客や近隣の住人のみが使用する静かな通りだったという。
第二次大戦時の東京大空襲によって表参道全体は壊滅状態となり、ケヤキ並木も約200本のうち13本を残して全燃。終戦後、ケヤキは近隣団体によって2年掛かりで植え替えられ、現在の姿を見せている。
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