土木工事に必須の土量計算、その基本的な計算方法
道路工事、ダム建設、土地造成といったさまざまなプロジェクトにおいて、掘削や盛土に必要な土の量を計算して、工事のコストやスケジュールを正確に計画するために必要不可欠な計算方法──それが、土量計算である。
土木工事では、土を工事前の地山にある状態から、ほぐして運搬し、締め固める。そうすると、そのそれぞれの状態で体積は変化する。これを土量変化と呼ぶ。
今回解説するのは、造成工事で土の運搬・分配計画を立てるために欠かせない土量の変化率についてである。
土は圧力等の加減によって密度が変化するため、山から掘削する土量と、建設現場で使用する土量は同じにはならない。
そのため、工事に必要な掘削量や、工事後にどれだけの余剰な土量が発生するかなどは、土量の変化率を計算してあらかじめ確認しておくことが重要だ。
土量の変化率は土工事のキホン! 掘削から盛土まで、土の体積はどう変わる?
建物や道路をつくる建設工事の中でも、基礎となる土台を整える「造成工事」は土工事がメインとなる。
山を切り開いて平坦な地面をつくったり、逆に土手のように盛り上げた土地を新たにつくったりと、大がかりな工事になる。
土が必要な場合は、まず山で掘削を行い、ダンプカーなどに積込んで運搬してくる。
この掘削を「切土」、運搬してきた土を現場にあわせて盛ることを「盛土」と呼ぶ。
盛土は、地震や大雨で崩壊し、土砂崩れなどの災害につながるリスクを下げるため、適切な厚さにならす「敷均し(しきならし)」を行った後、ローラーなどで踏み固める「転圧」で密度の高い状態にすることが大切だ。
切土から盛土にする際、転圧などの工程によって土の体積は変化する。
この変化の度合いが土量変化率だ。土量は重さではなく、土の体積と認識しておくとスムーズに理解できる。
「地山」と呼ばれる土がもともとある山から掘削をすると、土は崩れ密度が緩くなるため、土量は増加する。
盛土を敷均し、転圧をかけると土の密度は地山にあるときよりもさらに高くなり、土量は減る。
このように、地山、切土、盛土という3つの段階で、土量はすべて異なってくる。
工事現場での土の不足や、余った土の処理問題を発生させないためには、切土と盛土は同じ土量にするのが最善である。
同じ土量になるよう、工事の計画段階で計算しておく必要があるというわけだ。
ほぐし率「L」と締め固め率「C」とは?
土量変化率は、地山にある土の土量変化率を1.0として考える。
掘削し、ほぐされた土量の変化率をほぐし率「L(Loose)」、その土を転圧し、締固められた土量の変化率を締固め率「C(Compact)」として、体積比で変化率を求めることができる。
それぞれの計算式は以下の通りだ。
- L(ルーズ)=ほぐした土量 ÷ 地山の土量
- C(コンパクト)=締め固めた土量 ÷ 地山の土量
これによってほぐした土量の変化率(=L)、締め固めた土量の変化率(=C)がわかる。これらの土量変化率を利用することによって、求めたい土量を計算することができる。
求めたい土量 = 基準の土量 × 求める土地変化率 ÷ 基準の土量変化率
また、国土交通省の「土木工事積算基準」では、土質ごとの一般的な土量変化率を次のように定めている。
- レキ質土・・・・・ 1.20(変化率L) 0.90(変化率C)
- 砂および砂質土・・ 1.20(変化率L) 0.90(変化率C)
- 粘性土・・・・・・ 1.25(変化率L) 0.90(変化率C)
一般的に、掘削をすると密度が緩くなるため土量は増加し、Lは1.0以上となり、圧力をかけて締固めると密度が高くなり、Cは1.0以下となる。
ただし、岩や石の多い地山の場合は、転圧すると盛土の土量が地山を上回る場合もあるため、土質には注意が必要だ。
土量変化率を計算してみよう!
土量変化率の計算式に数字を当てはめて、具体的に見てみよう。以下の条件で計算例を挙げる。
- 地山の土質:レキ質土
- 土量変化率:L=1.20、C=0.90
という条件で計算例をあげてみよう。
①地山の土量2000㎥における運搬土量は……?
これは地山の土量からほぐした土量を求めればよいので、
地山の土量 × L(ほぐした土量の変化率)÷1(地山土量)
=
2000 × 1.2 ÷ 1= 2400㎥ となる。
=
2000 × 1.2 ÷ 1= 2400㎥ となる。
②運搬土量400㎥における盛土量は……?
これは運搬土量=ほぐした土量から、盛土量=締め固めた土量を求めるので、
運搬土量 × C(締め固めた土量の変化率)÷ L(ほぐした土量の変化率)
=
400 × 0.9 ÷ 1.2 = 300㎥ となる。
=
400 × 0.9 ÷ 1.2 = 300㎥ となる。
③盛土量900㎥における地山の土量は……?
これは盛土量 = 締め固めた土量から、地山の土量を求める。
盛土量 × 1(地山の土量の変化率)÷ C(締め固めた土量の変化率)
=
900×1÷0.9=1000㎥
=
900×1÷0.9=1000㎥
④ 盛土量が1,000㎥の場合、運搬すべき土量は……?
まず、地山の土量を求める:
0.90 = 1,000㎥ / 地山の土量(㎥) 地山の土量(㎥) = 1000/0.90 = 1,111㎥
次に、ほぐした土量を求める:
1.20 = ほぐした土量(㎥)/ 1,111㎥ ほぐした土量(㎥)= 1,111㎥ × 1.20 = 1,333㎥
したがって、地山から1,333㎥の土の運搬が必要となる。
0.90 = 1,000㎥ / 地山の土量(㎥) 地山の土量(㎥) = 1000/0.90 = 1,111㎥
次に、ほぐした土量を求める:
1.20 = ほぐした土量(㎥)/ 1,111㎥ ほぐした土量(㎥)= 1,111㎥ × 1.20 = 1,333㎥
したがって、地山から1,333㎥の土の運搬が必要となる。
現場で活用されているさまざまな土量計算方法
こうした基礎を踏まえたうえで、実際の現場で土量計算をするためにはいくつかの方法がある。
それぞれプロジェクトを行う地形の状況や規模などによって、取り入れる手法はそれぞれだ。代表的な例を挙げていくと……。
平均断面法
土量を計算するための、いちばんシンプルな手法がこの平均断面法だ。
まず、現地の測量を行って、一定の間隔で断面図(横断図)を作成する。
そして各々の断面積を計算し、その感覚と平均の断面積によって土量を求めるという方法だ。
たとえば2点間の土量を求める場合、測量によって地点A1とA2の断面積と、そこからA1〜A2間の距離 = Lを割り出す。
そこからA1〜A2間の体積=土量を求めることができる。以下がその公式となる。
V =(A1+A2)× 2 ÷ L
広い土地では、いくつかの測量点間で出された体積を合わせていけば、その土量を求めていける。
V1 =(A1+A2)× 2÷ L1
V2 =(A2+A3)× 2÷ L2
V1 + V2 = L1〜L2間 の土量
V2 =(A2+A3)× 2÷ L2
V1 + V2 = L1〜L2間 の土量
メッシュ法(柱状法)
こちらは現在、最も土木現場においてポピュラーな手法である。
対象区域を平面図上でメッシュに区分けする。
そしてそのメッシュ交点標高差を計測する。
そのうえで、各メッシュの面積と標高差から体積を割り出し、全体を合計することで土量が求められる。
このメッシュ法は先の平均断面法と比べ、広い区域にわたる土量計算が比較的正確にできるため、大規模工事や複雑な地形で効果的な手法である。
最新の測量技術を用いた土量計算
ところで、土量計算は一度で終わるわけではない。
大まかなスケジュールやコストを見積もるために計画・設計段階で、その後詳細な設計を行う際に行い、さらには施工前の準備で再確認をしなければならない。
また、実際に工事を進めていくなかで、土が膨張したり沈降したりすることがある。よって、その影響が出ないように施行の段階でも確認しなくてはならない。
さらには完成後には最終的な土量を確認し、報告書の作成を行う。場合によっては後処理をする必要も出てくる。
そのたびに測量し、土量計算を行うプロセスは、人的・時間的なコストが膨らんでいくことになる。
そこで、現在注目されているのが、これまでの測量手法を活かしたうえで、最新測量技術を使って土量計算を行う手法である。
ドローンや地上レーザー測量といった最新の測量技術を用い、現地のデジタル地形モデル(DTM=Digital Terrain Model)を作成する。現況の地形と設計された後の地形を比較し、ソフトウェアによって土量を自動計算していく。
近年の技術の進化によって、精度は極めて高くなり、複雑な地形や大規模なプロジェクトでも、正確に土量を計算することが可能となっている。
さらに、導入コストも安くなってきており、多くの現場で活用が進んでいるのだ。
誰でも簡単に土量計算ができるスマホ測量アプリ「OPTiM Geo Scan」
こうした土量計算のプロセスを短縮し、圧倒的な生産性向上を実現できる3次元測量アプリとして注目されているのが、OPTiMの「OPTiM Geo Scan」である。
LiDARセンサー搭載のスマートフォンととGNSSレシーバー取得の位置情報を組み合わせることで、短時間で高精度な測量を行える画期的な技術だ。
さらには、さまざまなアプリと連携しており、測量データから平面図、縦断図、横断図を作図できる図化機能「OPTiM Geo Design」、さらに測量から得たデータの距離や面積計算が可能なオンライン点群処理ソフトウェア「スキャン・エックス」などと連携している。
とくに注目すべきは「スキャン・エックス」。こちらはリアルタイムにデータ連携を行い、遠隔でもデータの編集・解析・共有が可能なのだ。
さらに、測量データから土量の計算も可能で、上記に挙げたような複雑な計算を行う必要もなく、経験が少ない人でも簡単に活用することができる。
さらには、「OPTiM Geo Scan」で取得したデータを重ねてひとつのデータとして共有できるため、現場での確認漏れなどを防ぐことが可能だ。
加えて「スキャン・エックス」は、従来の点群処理サービスに加えて導入費用が約1/10という圧倒的な低価格と、高スペックなPCも不要という導入ハードルの低さが魅力的だ。
複雑で属人性が大きい土量計算の作業を軽減するためにも、導入を検討してみてはいかがだろうか。
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