サブコン企業とは?
サブコンは土木・建築工事の一部を請け負う事業者のこと。
「サブコン」は、Subcontractor(サブ コントラクター)の略語で、Subは「下位の」や「従属の」という意味合いを持つ接頭語、Contractorは建設業者という意味の名詞である。
元請であるゼネコンから発注される専門工事を請け負う事業者で、設備工事がメインとなる。
また、事業者ごとに電気設備系、電気通信系、空調設備(管工事)系など分野ごとに強みを持つ。専門特化している事業者もあれば、各種設備工事を手掛ける「総合設備業者」もある。
サブコンとゼネコンの違いと関係性
日本の建設業は重層下請構造になっており、元請事業者であるゼネコンが自治体や公共団体、民間企業から工事を受注し、専門工事をサブコンに発注。
サブコンがさらに中小規模の事業者に発注し、中小規模の事業者は職人に仕事を依頼するという流れが主流になっている。
ゼネコンはGeneral Contractorの略語で、全体的な請負業者という意味を持つ。ゼネコンは発注者の窓口となり、サブコンを管理する役割も担う。
ゼネコンの仕事のメインが工事全体のとりまとめである一方、サブコンの役割は専門工事となる。サブコンで働くことは高い専門性が身に付き、スキルアップできるという魅力がある。
大手サブコンを分野別に紹介!
下請けといえども、サブコンの中には年間売上が4000億円規模におよぶ事業者もある。ここでは電気設備系、電気通信系、空調設備(管工事)系の各分野で、大手と呼ばれる企業を紹介しよう。
関電工(電気設備系)
- 設立 1944年9月1日
- 資本金 102億6400万円
- 本社所在地 東京都港区
- 社員数 7619名(2022年3月末現在)
【事業内容】
電気設備工事、空調・給排水設備工事、情報通信関連工事、電力設備工事、リニューアル工事、発電事業ほか
関電工は第二次世界大戦中の1944年、電気工事業整備要綱により電気工事関連業を営む9社が集まり設立された。現在、グループ会社は30以上。2022年3月期の売上は4290億円。電気設備工事のほか発電所の設計・施工、南極地域観測隊への社員の派遣も行っている。
きんでん(電気設備系)
- 設立 1944年8月26日
- 資本金 264億円
- 本社所在地 大阪府大阪市北区
- 社員数 8185名(2022年3月末)
【事業内容】
電気設備、計装設備、情報通信設備、空調・衛生設備、内装設備、土木設備、省エネ・リニューアル、再生可能エネルギー、ESCO
1944年、電気工事事業者80社余りが統合して近畿電気工事株式会社が設立。関西配電(現関西電力)の工事部門として配電工事を中心に手掛けてきた。1990年に現在の「株式会社きんでん」に社名を変更。2003年より省エネルギーに関する包括的なサービスを提供するESCO事業にも取り組んでいる。
九電工(電気設備系)
- 設立 1944年12月1日
- 資本金 125億円
- 本社所在地 福岡県福岡市南区
- 社員数 6971名
【事業内容】
電気設備工事、配電線工事、空気調和・給排水衛生設備工事、情報通信設備工事、プラント設備工事、環境設備工事、防災設備、エコ・関連事業、省エネ計画
九電工は九州で電気工事関連事業を手がける14社が統合し設立された。現在は、施工戦力、生産性、ガバナンスの改革を中期計画の目標に定め、持続的な成長を目指している。また、DX化にも力を入れており、2024年までの5年間で150億円の投資を行なう計画だ。
トーエネック(電気設備系)
- 設立 1944年10月1日
- 資本金 76億8000万円
- 本社所在地 愛知県名古屋市中区
- 社員数 4743名(2022年3月31日現在)
【事業内容】
電力供給設備工事、電気設備工事、空調衛生設備工事、情報通信工事、エネルギー事業、省エネ住宅設備工事、国際事業
トーエネックは電気工事業整備要綱により東海4県で電気工事業を営んでいた企業23社が合併し設立された(設立当初の社名は東海電気工事)。1970年代からは海外にも事業を拡大、ODA案件にも参画している。また、工事施工部門と技術研究開発部とが協力し合い技術力向上に取り組んでいる。
ユアテック(電気設備系)
- 設立 1944年10月
- 資本金 78億390万円
- 本社所在地 宮城県仙台市宮城野区
- 社員数 3729名(2022年3月31日)
【事業内容】
電気設備工事、空調管設備工事、電力設備工事、リニューアル工事、再生可能エネルギー関連工事、情報通信工事、土木建築工事、海外工事
ユアテックは東北電力グループの一員で、ユアテック自体もグループ会社16社、協力会社445社を有する。2022年度の売上は連結で2273億円。
ベトナムとミャンマーにも拠点を構えODA工事にも参画している。技術開発に積極的で、安全性の高い装置や工具の開発や新市場向けの技術開発にも取り組んでいる。
エクシオグループ(電気通信系)
- 設立 1954年5月17日
- 資本金 68億8800万円
- 本社所在地 東京都渋谷区
- 社員数 4194名(連結15874名/2022年3月31日)
【事業内容】
アーバン・システム事業(通信、電気、土木、環境、グローバル)、ヒューマン・システム事業(システムソリューション、グローバル)
エクシオグループは、1954年に協和電設の名で設立、電設と通信建設を中心に事業を展開してきたが、事業領域の拡大方針に合わせ社名を協和エクシオに変更。
その後、グループ企業は100社超に増加。2021年、エクシオグループに社名変更。2021年度の売上高は連結で5948億円にのぼる。
コムシスHD(電気通信系)
- 設立 2003年9月29日
- 資本金 100億円
- 本社所在地 東京都品川区
- 社員数 97名(連結17520名/2022年3月末現在)
【事業内容】
情報通信工事事業、電気設備工事事業および情報処理関連事業等を行う子会社の経営管理など
コムシスホールディングスは電気通信事業などを手掛ける複数の企業が合併や社名変更を経て、2003年に持ち株会社体制へ移行。
現在は日本コムシス、NDS、サンワコムシスエンジニアリングなど主要子会社9社と連結子会社約60社を有する。有線・無線ネットワークの設計・施工といった通信キャリア事業の他、ITソリューションサービスを提供している。
ミライト・ワン(電気通信系)
- 設立 2010年10月1日
- 資本金 70億円
- 本社所在地 東京都江東区
- 社員数 3710名(グループ連結14006名/2022年3月31日現在)
【事業内容】
みらいドメイン(街づくり・里づくり/企業DX・GX、グリーン発電事業、ソフトウェア事業、グローバル事業)、企業/環境社会基盤ドメイン(ICTソリューション事業、環境・社会イノベーション事業)、通信基盤ドメイン(モバイルネットワーク事業、通信インフラ事業)
ミライト・ワンの起源は1946年創業の電気通信工事業を営む大明電話工業。その後、複数の企業と合併し、2010年にミライト・ホールディングスを設立、持株会社化した。
2022年7月には持株会社と関連会社2社が合併しミライト・ワンに商号を変更。2021年度の売上は4703億円にのぼる。
NECネッツエスアイ(電気通信系)
- 設立 1953年11月26日
- 資本金 131億2200万円
- 本社所在地 東京都港区
- 社員数 7675名(2022年3月31日)
【事業内容】
ネットワークをコアとするICTシステムに関する企画・コンサルティングや設計・構築などの提供、および日本全国にわたるサポートサービス拠点による24時間365日対応の保守・運用、監視サービスならびにアウトソーシングサービスの提供
NECネッツエスアイは通信インフラ設置事業からスタートした。その後、徐々に事業を拡大し、現在は“コミュニケーションサービス・オーケストレーター”としてシステムインテグレーションから施工・サービスまで一気通貫で提供している。現在、中期経営計画として「実践型&現場密着型コンサルティング」の強化に取り組んでいる。
中電工
- 設立 1944年9月29日
- 資本金 34億8190万円
- 本社所在地 広島県広島市中区
- 社員数 3577名(2023年4月現在)
【事業内容】
電気設備工事、空調・衛生設備工事、情報通信設備工事、配電線工事、送変電地中線工事、リニューアル工事、再生可能エネルギー関連事業、省エネルギー関連事業、水道施設工事、防災・消防設備工事、鉄塔工事、土木建築工事、電気機器の設計・製作・販売・修理・据付・保守、ソフトウェア開発、コンサルティング・メンテナンス業務
中電工は中国地域の配電線・送変電地中線工事をメインに、東京や大阪などの都市圏においては電気設備工事、空調管工事、情報通信工事なども手掛けている。
社内に技術センターを有し、作業者見守りシステムや移動事務所車両などの開発にも取り組む。2022年度の売上高は1890億円にのぼる。
高砂熱学工業 〈空調設備(管工事)系〉
- 設立 1923年11月16日
- 資本金 131億3400万円
- 本社所在地 東京都新宿区
- 社員数 2131名(2022年3月末現在)
【事業内容】
一般空調・大空間事業、プロセス空調事業、作業環境空調事業、電気・計装・通信事業、地域冷暖房システム事業
高砂熱学工業は創業当初から暖房工事に強みを持ち、高層ビルやデパート、美術館、ドーム球場、ターミナル駅など東京や大阪・京都を中心に各地のランドマークの空調を手掛けている。
また、創業当時は輸入品が当たり前であった空調設備の自社開発にも取り組んできた。2021年度の売上は連結で3027億4600万円。2023年に創立100周年を迎える。
大気社〈空調設備(管工事)系〉
- 設立 1913年4月10日
- 資本金 64億5517万円
- 本社所在地 東京都新宿区
- 社員数 1611名(連結4890名/2023年3月末現在)
【事業内容】
ビル空調設備、産業空調設備、塗装システム、植物工場、オートメーション
大気社は1913年、建材社として創業、その後、塗装プラント事業をはじめさまざまな分野へ事業領域を拡大していった。
現在は「エネルギー・空気・水」に関わる環境対応技術を核に事業を展開。国内のみならず北米地域や東南アジア地域にも拠点を構える。特許および実用新案の登録件数は185件、2021年度の売上は2092億6100万円にのぼる。
三機工業〈空調設備(管工事)系〉
- 設立 1925年4月22日
- 資本金 81億518万円
- 本社所在地 東京都中央区
- 社員数 2096名(連結2607名/2022年3月31日現在)
【事業内容】
建築設備事業(ビル空調衛生事業、産業空調事業、電気事業、スマートビルソリューション事業、ファシリティシステム事業)、プラント設備事業(機械システム事業、環境システム事業)、不動産事業
三機工業は三井物産の機械部を前身に創設された。現在は空調・冷熱設備に限らず、給排水・衛生、電気、情報通信など幅広い分野でエンジニアリングサービスを展開している。
技術の研さんに力を入れており、年間約14億円を技術開発費に充てている。2021年度の売上は1931億8900万円。2025年に創立100周年を迎える。
ダイダン〈空調設備(管工事)系〉
- 設立 1933年10月10日
- 資本金 44億7972万円
- 本社所在地 大阪府大阪市西区
- 社員数 1645名(連結1830名/2023年3月末現在)
【事業内容】
電気設備(電気設備、防災設備、情報通信設備)、空調設備(ビル空調設備、医療施設向け空調設備、産業施設向け空調設備)、給排水衛生施設(給排水施設、消化設備、ユーティリティ設備)
ダイダンは工業用機械や電気器具の販売業からスタートし、暖房工事業に進出。その後、関連分野へ事業を拡大し、現在まで「光と空気と水を生かす」をスローガンに事業を展開している。
中期経営計画では2023年までを「整えるステージ」と位置づけ、国内外の基盤を整備・強化、新規事業の開拓などに取り組んでいる。
新日本空調〈空調設備(管工事)系〉
・設立 1969年10月1日
・資本金 51億5860万円
・本社所在地 東京都千代田区
・社員数 1103名(連結1585名/2022年3月31日現在)
【事業内容】
空気調和、冷暖房、換気、給排水、衛生設備等の設計、監理ならびに工事請負
新日本空調は前身の東洋キヤリヤ工業時代から全列車空調や全船空調の施工を手掛けてきた。新日本空調の設立以降も国内各地のランドマークとなるスポットの空調施工を手掛けている。
同社は1998年に世界最高レベルの「微粒子および気流可視化システム」を開発。2022年3月期の受注工事高は1161億9700万円にのぼる。
WRITTEN by
三浦 るり
2006年よりライターのキャリアをスタートし、2012年よりフリーに。人材業界でさまざまな業界・分野に触れてきた経験を活かし、幅広くライティングを手掛ける。現在は特に建築や不動産、さらにはDX分野を探究中。