行政・政策
加藤 泰朗 2022.9.8

2024年、建設業でも時間外労働上限規制スタート。「改正労働基準法」適用で働き方はどう変わる!?

CONTENTS
  1. 現行の時間外労働の規制
  2. 従来の労働基準法の問題
  3. 2024年4月からどう変わる?
  4. 改正法適用で、もっと魅力のある業種へ
キツイ・キタナイ・キケン。いわゆる3Kのイメージで語られがちな土木・建設業だが、このうちの一つ、"キツイ"のイメージが、2024年4月1日から大きく変わるかもしれない。

土木・建設業など一部事業・業務に与えられていた、改正労働基準法(以下、改正法)の施行の猶予期間が2024年3月末で終了し、ほかの業界と同様、罰則付き時間外労働の上限規制がスタートするからだ。

改正法の施行により、建設業でも時間外労働の上限は「45時間、年360時間」が原則で、特別な事情がある場合でも「年間720時間以内、複数月(2〜6カ月)で平均80時間、単月100時間未満」となり、違反した使用者には懲役または罰金が科せられることになる。


現行の時間外労働の規制


今回の改正法は、2018年6月に「働き方改革関連法案」の成立を受けて、翌19年4月1日から大企業に、2020年4月1日からは中小企業に段階的に適用されている。

ただし、土木・建設業、自動車運転業務、医師、鹿児島県および沖縄県における砂糖製造の事業は、事業・業務の性質上、ただちに時間労働の上限規制を適用することになじまないため、5年間の猶予措置が設けられていた。


2019年法改正の主な目的は、「長時間労働を防止するために、現行の時間外労働規制を改めること」である。

労働基準法は、使用者は従業員に1日8時間および1週間40時間を超えて労働させてはならず(法定労働時間)、毎週少なくとも1回の休日(法定休日)を付与しなければならないと定めている(法32条・35条)。

ただし、「時間外労働を行う業務の種類」や「時間外労働の上限」などに関して、労働基準法36条に基づく労使協定、いわゆる「36(サブロク)協定」を締結し、所轄労働基準監督署⻑へ届け出れば、法定労働時間を超過して従業員に働かせたり、法定休日に出勤させたりできる。多くの会社に残業や休日出勤があるのは、こうした手続きを経ているからである。

さらに、繁忙期や緊急時など、臨時的に業務量が大幅に増加することが予想される業界・業種については、労使間で「特別条項付き36協定」を締結すれば、年6回まで、つまり1年の半分を超えない範囲内で、法に定められた上限を超えて従業員を働かせることが可能になる。


従来の労働基準法の問題


これまでの労働基準法の問題は、36協定あるいは特別条項付き36協定を結んでも、法律上、時間外労働に上限がなかったことにある。


36協定にもとづく時間外労働については、厚生労働大臣の告示(限度基準告示)で上限基準が定められていたものの、あくまでも"基準"に過ぎず、罰則による強制力はない。そのうえ「特別条項付き36協定」を締結すれば、事実上、年6カ月までは上限なく時間外労働させられる状況にあった。

さらに土木・建設業に限って言えば、天候などに自然条件に労働時間が左右される事業の性質上、そもそも36協定の上限基準の適用が除外されており、まさに無制限残業が横行しやすい環境だったのである。


2024年4月からどう変わる?


2024年4月1日、建設業にも改正法が適用されることで、36協定、特別条項付き36協定ともに、労働時間の上限が法律で規定され、違反すると罰則が科されることになる。改正ポイントを下表にまとめる。

建設業に関わる法改正のポイント

  1. 時間外労働時間の上限は月45時間、年360時間が原則。臨時的な特別な事情がなければこれを超えることはできない。
  2. 臨時的な特別な事情があって、労使が合意する場合でも、年720時間以内、複数月(2〜6カ月)の月平均80時間以内(休日労働を含む)、単月100時間未満(休日労働を含む)を超えることができない。

    ただし、災害復旧や復興事業に従事する場合は、「複数月の月平均が80時間以内」「単月100時間未満」の規制は適用されない。
  3. 原則である月45時間を超えられるのは、年間6カ月まで。
  4. 上記に違反した場合は、罰則の対象となる。
    罰則:使用者に対して6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が適用。


改正法適用で、もっと魅力のある業種へ


土木・建設業の就業者数は、1997年にピークを迎え、その後、一時横ばい期間もあるが、減少傾向にある。

一方で、ほかの産業と比べても就業者の高齢化率が高く、若手労働者の入職・定着が増えないかぎり、現状の生産体制を維持できなくなることは想像に難くない。


土木・建設業が抱える深刻な人不足問題の背景の一つには、冒頭の"キツイ"に象徴される、労働時間の長さがある。

厚生労働省「毎月勤労統計調査」をもとに建設業の現状を整理した「建設業ハンドブック2020」によると、2019年の調査で、建設業の労働時間は、産調査産業の平均と比較して、年間300時間以上長く、週休二日も十分に確保されていないことが指摘されている。


今回の建設業への改正法適用で、少なくとも労働時間に関してはほか産業と同じ水準になる。週休2日については改正法でも義務化されていないが、建設業界では2018年に改訂された「建設工事における適切な工期設定等のためのガイドライン」にもとづき、週休2日工事普及拡大のための取り組みが各所で進んでいる。

国土交通省は、建設業の新3Kとして「給与・休暇・希望」を掲げている。2024年4月の法適用も、その一助になることを期待する。

画像:Shutterstock
WRITTEN by

加藤 泰朗

人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、2019年独立。<br />フリーランスとして、書籍・雑誌・Webで編集・ライティングに従事。<br />難しい内容をわかりやすく伝えることを大切にしています。

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