SB C&S株式会社(以下SB C&S)は、AIを手軽に「学べる・作れる・試せる」というコンセプトのもと、クラウド型AIプラットフォーム「AIMINA」(アイミナ)を開発。2022年1月にフリートライアルプランの提供を開始し、5月より有償プランの提供も開始した。
DX化を推進する上で、データの認識・判断・予測を行うAI(機械学習)は欠かすことのできない存在といえよう。それゆえ専門外には興味があっても何をどこから手をつければいいのかわからず敬遠されがちだ。
エンジニアではないビジネスパーソンに、AIが身近なものとなるよう開発されたのが「AIMINA」だという。今回は、AIMINAの販売を手掛けるSB C&S株式会社 ICT事業本部 システム基盤推進本部 プラットフォーム推進統括部 AIMINA事業推進室 村松 貴耶氏(以下、敬称略)と室長 渡邉 敬介氏(以下、敬称略)に話をうかがった。インタビュー前編ではAIMINAの生まれた経緯やコンセプトについて語っていただく。
――AIMINAとはどんなものかも気になるところですが、まずはどんな会社が、どのような経緯で開発に至ったかを教えていただけますか?
村松:私たちSB C&Sはソフトバンクのグループ企業の原点であるIT流通事業をはじめ、現在はロボットやIoT、AIの領域にもチャレンジしています。
2018年にディープラーニングを使ったAI開発を行う上で必要となるNVIDIA GPUを手掛けるNVIDIA(エヌビディア)製品の販売代理店となったことで、私たちはAIのディープラーニング市場に参入したといえます。これをきっかに、AIの開発を手掛ける企業も参加するディープラーニング実践セミナーを開催したり、2021年10月には幕張メッセで開催された『AI EXPO』にも出展したりしてきました。
セミナーなどの場では販売店での業務効率化を図りたい、サービスレベルを向上させたい、AIの技術を採用したいという声が数多く聞かれました。販売など現場でのAI活用のニーズが高まっていることをひしひしと感じましたね。
すでに各業種のさまざまな利用シーンでAIの活用が進められており、AIに対する期待は刻々と高まってきている実感があります。日々のニュースでもAI関連の新しい事例や新製品の発表を多く目にしますよね。とはいえ日本におけるAIの普及率は先進国の中ではまだ低いといわれています。
AIを利用したいという要望はありつつも、具体的な構想に落とし込んで実証実験を行ったりTOC※1を実施したりという部分に課題を持つ企業が多いのではないかと推測します。
――たしかに、日々ニュースなどでAIの活用事例を目にして「うちでもできそう」と思いつつも、どこから手を付けていいかわからず二の足を踏んでいるケースは多そうですね。
村松: そこでAI導入のための構想策定やPoC(実証実験)を実施する手法が必要だと感じたのです。
これまでにもノーコードで開発できるAIプラットフォームは存在していましたが、エンジニアやデータサイエンティストがいなければ使いこなせなかったり、機能が限定されてしまったりというのが実態です。
そのような現状を打破するべく、構想策定やPoCなど上流工程の部分を活性化できるようなTOCツールを開発しようということになりました。そのため、当初から目指しているのは非エンジニアである現場の方々が使いたいと思えるようなツールです。
販売店で働くみなさんが業務を通して蓄積したデータを活用しAIで業務改善やサービス向上できればと考えています。できるだけ敷居を低くして、まずは要望や構想から一歩進んで試してみることでAIの活用を促進させていければという考えです。
――なるほど。仕事現場の最前線で働く方が蓄積されている情報を手掛かりにすればAIの導入はしやすそう。同時に敷居の低さも重要になりそうですね。
村松:サービスを提供する対象としては、AIの利用者層には①すでにAIに取り組んでいる方、②実現手段がわからない方、③活用のビジョンがない方と3段階に分け、AIMINAでは②の「やりたいことはあるけれど実現する手段がわからない」という方をターゲットに設定しています。それでAIのPoCを行ってもらえる環境を提供し、AIによる業務効率化のイメージを具現化していきたいと思っています。
――「やりたいことはあるけれど実現手段がわからない」という非エンジニア向けのAIプラットフォームを開発するにあたり気を付けた点はありますか?
村松:ディープラーニングの領域を大まかに3つのフェーズにわけてサービスの内容を絞っていきました。
第一フェーズはすでに学習したAIを公開しているモデル。実際にニュースで目にするようなAI活用例の多くは、世界の研究機関や大手企業によって膨大なリソースとデータを使って開発されたモデルをオープンソースとして公開しているものです。それを同じ用途で利用するだけでも8割近くの精度が期待できるのではないかと考えています。
第二フェーズは、オープンソース化されたモデルにチューニングを加えたカスタマイズモデルの提供です。ユーザーの傾向に応じて調整を加えれば8割以上の精度のAIモデルが提供できそうという見通しが立っています。
第三フェーズは、AIのモデルがまだない、もしくは既存のAIモデルでは対応できない領域、公開されているモデルでは対応できない場合や個別の学習が必要なケース。もしくはもっと高い精度を求めたいという場合。そのようなケースは日々AI研究に取り組む開発会社の領域になるでしょう。
フェーズ1と2はある程度システム化してサービス提供できるのではと私たちは考えました。こういったことからAIMINAはオープンソース化されているモデルをベースに、みなさんが持つデータを使って業務の改善や向上を目指すことが目的のツールとなっています。
AIMINAのコンセプトは、みんながやりたいAIを手軽に学べて試せるプラットフォーム。「学ぶ」という部分は、情報ポータルサイトを無償で公開しており、AIモデルを試すだけでなく知識習得もできるようにしています。
――AIに関するポータルサイトも並行して運営されているんですね。ナレッジのシェアがあるのはとても役立ちそう。
村松:AIに関する最新ニュースから基礎知識ももちろんですが、さまざまな企業のソリューションのニュース、AIMINAに関する情報、今後は活用事例も配信していく予定です。
多種多様な事例が日々更新されているので、それを広くお届けすることで「こういう使い方もやってみたいな」という気持ちになっていただければと考えています。
――メールマガジンのような利用法もできるのですね。
村松: そうですね。続いて、AI開発プラットフォームの方を紹介させていただきます。こちらは当社で開発したAIのエンジンで時系列解析、画像処理、自然言語処理、音声処理という分野においてユーザーのデータに最適なAIモデルを作成し、作ったモデルを試すことができるサービスです。
――時系列解析や音声処理まで幅広く含まれるんですね。
村松:そこが大きな特徴といえます。4分野にわたり計17のAIモデルを搭載する予定です。
――17種類も!多様なシーンで活用できそうですね。
村松:そうですね。さまざまな業種で幅広くご活用いただければと期待しています。ひとつの会社に多様な部門があり、それぞれにAIを業務に活用したいと考えているものがあると思います。そういった要望に応えるためにひとつのジャンルに特化するのではなく、幅広い利用シーンに対応できるツールになればと設計しています。
このほか、リリースはまだ少し先になりますが、このプラットフォームからさまざまな開発会社が提供するパッケージされたソリューションも購入できるようになります。
あくまでAIモデルを作って試してみるプラットフォームですので、実際にモデルを作成するにあたり、要件を定義するコンサル会社の介入が必要な場合や、アノテーション(※2)のような前処理が必要なケース、もしくはAIMINAでは対応できないことやより高い精度を求める場合にはパートナー企業へとおつなぎしていきます。
――AIMINAは“試す”機会を提供しており、より高い精度を求める場合や実際に運用するというフェーズに入る際はコンサル会社につないで導入を進めていく、ということですね。
渡邉:そうです。世の中のさまざまな事例やニュースを見て「こんなことができるんだ、自分たちもやりたい」と思い、AIモデルに使えるデータを持っていたとして、AI開発をどこに頼んだらいいかわからない、もしくは見積りを出してもらったらすごく高額になってしまって諦めるというケースは少なくないようです。
AI開発では、実証実験を行う場合、3ヶ月で開発費用は1000万円規模でしかも精度は保証しないという条件も珍しくありません。そのような中で、自分たちでやりたいようなことができそうかを試せるのがAIMINAです。
費用は月額7千円から試せるというのが一つの特徴で、また、オープンソースといっても精度はそれなりに高い。なぜならアメリカなどの研究機関で、膨大なリソースのデータで学習したモデルを用いているからです。
新しいものを次々と取り入れており、幅広いユーザーに活用していただけるようにあえて私たちは手を加えずに提供しています。条件さえ合えばかなり高い精度のモデルをそのままご利用いただくことができます。
――リーズナブルなAIMINAのサービス範囲でユーザーの課題を解決できる可能性は十分にあるんですね。
村松:AI導入においてコスト面で断念するケースは多く聞かれますので、まずはAIMINAでどのような効果が得られそうか試していただき、費用対効果の検証に使っていただければうれしいです。そしてAI導入を本格的に検討していただけるように幅広いシーンに対応できるモデルを搭載していきます。
――ユーザーがAIを導入しやすいようにという視点が感じられます。AIMINAで手軽にAIを試すことができ、より高精度なニーズや個別のニーズが出てきた場合にもサポート体制があるということですが。
渡邉:そうですね。AIMINAでモデルを作ってみて、業務効率化のイメージが明確になってAIの導入を本格化する際にもパートナー企業と連携してトータルサポートが可能です。
村松:目安としては、リアルタイム性を追わないAIモデルならAIMINAで事足りますが、リアルタイム性が重要になってくるならば別途開発が必要になります。
渡邉:リアルタイム性といっても月次の需要予測や来月の着地予測など、月に1回程度の予測作業ならばAIMINAだけで完結でき、データを入力するとCSVでダウンロードできます。
土木・建設業界に関連するものでいうと画像処理系は個別対応になるでしょう。画像をリアルタイムに処理するならば、システム会社の協力が必要になります。ユーザーの持つセンサー機器と管理ソフトを連携するなどのシステム開発が伴うのではないでしょうか。
――連携されているAI開発会社にはどのようなところがありますか?
村松:サイト上でもご紹介していますが、コンサル、AIのコンテンツ製作、データ関連のサービスをお持ちの企業などがあります。ユーザーが用途に応じて比較していただけるようになっています。
――パートナー企業が増えれば増えるほど、AIMINAでできることが増えていくんですね。
村松:パートナー企業は随時増やしていく計画です。サイト上ではパートナー企業の会社情報だけでなく製品情報や導入事例も紹介しています。
――2022年1月からフリ―トライアルプランの提供が始まったとのことですが、現状ユーザーはどのような業界が多いですか?
渡邉:今のところ製造業やIT系、情報通信系が目立ちますね。お客様への提案にAIを活用したいけれど実際どう対応したらいいのかわからないのでまずはAIMINAで試したいというケースが多いですね。このほかサービス、医療、流通、商社や物流などのユーザーもいます。
――お客様のソリューションにAIMINAを活用されているんですね。実際に利用されているユーザーの反響はどうでしょうか?
村松:AI導入を進めるにあたって社内で予算を取るのに役立っているようですね。自社が持つデータを使ってAIで業務改善やサービス向上できそうか幅広く検証できるとして重宝されています。
渡邉:AIMINAは特化型ではないので、ひとつの会社の中にあるさまざまなニーズに対応することができると評価していただいています。
村松:AIを積極的に活用されている企業の中にもAIの主管や先端技術部門以外までAIをマスターしているとか使いこなしているケースは実際それほど多くありません。
――日常業務の多くは先端技術を使うまでもないかと思います。AIMINAで解決できる部分は大きいでしょうね。
村松:ですから、ぜひ現場の方々にAIMINAをお試しいただければと思います。
【編集部 後記】
「AIはExcelくらい誰もが使うツールになる」と予測する識者もいたが、AIMINAがあれば確かに多くの人が手軽にAIを活用できるようになりそうだ。
まだまだ発展途上の分野だけに「学べる」機会が備わっているのも便利である。インタビューの後編では土木・建設業の活用例など、具体的な使用イメージについて語っていただく。
SB C&S株式会社
東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝オフィスタワー
https://cas.softbank.jp/
「AIMINA(アイミナ)」公式サイト
https://aimina.com/
DX化を推進する上で、データの認識・判断・予測を行うAI(機械学習)は欠かすことのできない存在といえよう。それゆえ専門外には興味があっても何をどこから手をつければいいのかわからず敬遠されがちだ。
エンジニアではないビジネスパーソンに、AIが身近なものとなるよう開発されたのが「AIMINA」だという。今回は、AIMINAの販売を手掛けるSB C&S株式会社 ICT事業本部 システム基盤推進本部 プラットフォーム推進統括部 AIMINA事業推進室 村松 貴耶氏(以下、敬称略)と室長 渡邉 敬介氏(以下、敬称略)に話をうかがった。インタビュー前編ではAIMINAの生まれた経緯やコンセプトについて語っていただく。
エンジニアではない、現場の人たちが使いこなせるAIツールを
――AIMINAとはどんなものかも気になるところですが、まずはどんな会社が、どのような経緯で開発に至ったかを教えていただけますか?
村松:私たちSB C&Sはソフトバンクのグループ企業の原点であるIT流通事業をはじめ、現在はロボットやIoT、AIの領域にもチャレンジしています。
2018年にディープラーニングを使ったAI開発を行う上で必要となるNVIDIA GPUを手掛けるNVIDIA(エヌビディア)製品の販売代理店となったことで、私たちはAIのディープラーニング市場に参入したといえます。これをきっかに、AIの開発を手掛ける企業も参加するディープラーニング実践セミナーを開催したり、2021年10月には幕張メッセで開催された『AI EXPO』にも出展したりしてきました。
セミナーなどの場では販売店での業務効率化を図りたい、サービスレベルを向上させたい、AIの技術を採用したいという声が数多く聞かれました。販売など現場でのAI活用のニーズが高まっていることをひしひしと感じましたね。
すでに各業種のさまざまな利用シーンでAIの活用が進められており、AIに対する期待は刻々と高まってきている実感があります。日々のニュースでもAI関連の新しい事例や新製品の発表を多く目にしますよね。とはいえ日本におけるAIの普及率は先進国の中ではまだ低いといわれています。
AIを利用したいという要望はありつつも、具体的な構想に落とし込んで実証実験を行ったりTOC※1を実施したりという部分に課題を持つ企業が多いのではないかと推測します。
――たしかに、日々ニュースなどでAIの活用事例を目にして「うちでもできそう」と思いつつも、どこから手を付けていいかわからず二の足を踏んでいるケースは多そうですね。
村松: そこでAI導入のための構想策定やPoC(実証実験)を実施する手法が必要だと感じたのです。
これまでにもノーコードで開発できるAIプラットフォームは存在していましたが、エンジニアやデータサイエンティストがいなければ使いこなせなかったり、機能が限定されてしまったりというのが実態です。
そのような現状を打破するべく、構想策定やPoCなど上流工程の部分を活性化できるようなTOCツールを開発しようということになりました。そのため、当初から目指しているのは非エンジニアである現場の方々が使いたいと思えるようなツールです。
販売店で働くみなさんが業務を通して蓄積したデータを活用しAIで業務改善やサービス向上できればと考えています。できるだけ敷居を低くして、まずは要望や構想から一歩進んで試してみることでAIの活用を促進させていければという考えです。
――なるほど。仕事現場の最前線で働く方が蓄積されている情報を手掛かりにすればAIの導入はしやすそう。同時に敷居の低さも重要になりそうですね。
村松:サービスを提供する対象としては、AIの利用者層には①すでにAIに取り組んでいる方、②実現手段がわからない方、③活用のビジョンがない方と3段階に分け、AIMINAでは②の「やりたいことはあるけれど実現する手段がわからない」という方をターゲットに設定しています。それでAIのPoCを行ってもらえる環境を提供し、AIによる業務効率化のイメージを具現化していきたいと思っています。
手持ちのデータを使って、学びながらAIを活用していける
――「やりたいことはあるけれど実現手段がわからない」という非エンジニア向けのAIプラットフォームを開発するにあたり気を付けた点はありますか?
村松:ディープラーニングの領域を大まかに3つのフェーズにわけてサービスの内容を絞っていきました。
第一フェーズはすでに学習したAIを公開しているモデル。実際にニュースで目にするようなAI活用例の多くは、世界の研究機関や大手企業によって膨大なリソースとデータを使って開発されたモデルをオープンソースとして公開しているものです。それを同じ用途で利用するだけでも8割近くの精度が期待できるのではないかと考えています。
第二フェーズは、オープンソース化されたモデルにチューニングを加えたカスタマイズモデルの提供です。ユーザーの傾向に応じて調整を加えれば8割以上の精度のAIモデルが提供できそうという見通しが立っています。
第三フェーズは、AIのモデルがまだない、もしくは既存のAIモデルでは対応できない領域、公開されているモデルでは対応できない場合や個別の学習が必要なケース。もしくはもっと高い精度を求めたいという場合。そのようなケースは日々AI研究に取り組む開発会社の領域になるでしょう。
フェーズ1と2はある程度システム化してサービス提供できるのではと私たちは考えました。こういったことからAIMINAはオープンソース化されているモデルをベースに、みなさんが持つデータを使って業務の改善や向上を目指すことが目的のツールとなっています。
AIMINAのコンセプトは、みんながやりたいAIを手軽に学べて試せるプラットフォーム。「学ぶ」という部分は、情報ポータルサイトを無償で公開しており、AIモデルを試すだけでなく知識習得もできるようにしています。
――AIに関するポータルサイトも並行して運営されているんですね。ナレッジのシェアがあるのはとても役立ちそう。
村松:AIに関する最新ニュースから基礎知識ももちろんですが、さまざまな企業のソリューションのニュース、AIMINAに関する情報、今後は活用事例も配信していく予定です。
多種多様な事例が日々更新されているので、それを広くお届けすることで「こういう使い方もやってみたいな」という気持ちになっていただければと考えています。
――メールマガジンのような利用法もできるのですね。
村松: そうですね。続いて、AI開発プラットフォームの方を紹介させていただきます。こちらは当社で開発したAIのエンジンで時系列解析、画像処理、自然言語処理、音声処理という分野においてユーザーのデータに最適なAIモデルを作成し、作ったモデルを試すことができるサービスです。
――時系列解析や音声処理まで幅広く含まれるんですね。
村松:そこが大きな特徴といえます。4分野にわたり計17のAIモデルを搭載する予定です。
――17種類も!多様なシーンで活用できそうですね。
村松:そうですね。さまざまな業種で幅広くご活用いただければと期待しています。ひとつの会社に多様な部門があり、それぞれにAIを業務に活用したいと考えているものがあると思います。そういった要望に応えるためにひとつのジャンルに特化するのではなく、幅広い利用シーンに対応できるツールになればと設計しています。
このほか、リリースはまだ少し先になりますが、このプラットフォームからさまざまな開発会社が提供するパッケージされたソリューションも購入できるようになります。
あくまでAIモデルを作って試してみるプラットフォームですので、実際にモデルを作成するにあたり、要件を定義するコンサル会社の介入が必要な場合や、アノテーション(※2)のような前処理が必要なケース、もしくはAIMINAでは対応できないことやより高い精度を求める場合にはパートナー企業へとおつなぎしていきます。
――AIMINAは“試す”機会を提供しており、より高い精度を求める場合や実際に運用するというフェーズに入る際はコンサル会社につないで導入を進めていく、ということですね。
渡邉:そうです。世の中のさまざまな事例やニュースを見て「こんなことができるんだ、自分たちもやりたい」と思い、AIモデルに使えるデータを持っていたとして、AI開発をどこに頼んだらいいかわからない、もしくは見積りを出してもらったらすごく高額になってしまって諦めるというケースは少なくないようです。
AI開発では、実証実験を行う場合、3ヶ月で開発費用は1000万円規模でしかも精度は保証しないという条件も珍しくありません。そのような中で、自分たちでやりたいようなことができそうかを試せるのがAIMINAです。
費用は月額7千円から試せるというのが一つの特徴で、また、オープンソースといっても精度はそれなりに高い。なぜならアメリカなどの研究機関で、膨大なリソースのデータで学習したモデルを用いているからです。
新しいものを次々と取り入れており、幅広いユーザーに活用していただけるようにあえて私たちは手を加えずに提供しています。条件さえ合えばかなり高い精度のモデルをそのままご利用いただくことができます。
――リーズナブルなAIMINAのサービス範囲でユーザーの課題を解決できる可能性は十分にあるんですね。
村松:AI導入においてコスト面で断念するケースは多く聞かれますので、まずはAIMINAでどのような効果が得られそうか試していただき、費用対効果の検証に使っていただければうれしいです。そしてAI導入を本格的に検討していただけるように幅広いシーンに対応できるモデルを搭載していきます。
――ユーザーがAIを導入しやすいようにという視点が感じられます。AIMINAで手軽にAIを試すことができ、より高精度なニーズや個別のニーズが出てきた場合にもサポート体制があるということですが。
渡邉:そうですね。AIMINAでモデルを作ってみて、業務効率化のイメージが明確になってAIの導入を本格化する際にもパートナー企業と連携してトータルサポートが可能です。
村松:目安としては、リアルタイム性を追わないAIモデルならAIMINAで事足りますが、リアルタイム性が重要になってくるならば別途開発が必要になります。
渡邉:リアルタイム性といっても月次の需要予測や来月の着地予測など、月に1回程度の予測作業ならばAIMINAだけで完結でき、データを入力するとCSVでダウンロードできます。
土木・建設業界に関連するものでいうと画像処理系は個別対応になるでしょう。画像をリアルタイムに処理するならば、システム会社の協力が必要になります。ユーザーの持つセンサー機器と管理ソフトを連携するなどのシステム開発が伴うのではないでしょうか。
――連携されているAI開発会社にはどのようなところがありますか?
村松:サイト上でもご紹介していますが、コンサル、AIのコンテンツ製作、データ関連のサービスをお持ちの企業などがあります。ユーザーが用途に応じて比較していただけるようになっています。
――パートナー企業が増えれば増えるほど、AIMINAでできることが増えていくんですね。
村松:パートナー企業は随時増やしていく計画です。サイト上ではパートナー企業の会社情報だけでなく製品情報や導入事例も紹介しています。
――2022年1月からフリ―トライアルプランの提供が始まったとのことですが、現状ユーザーはどのような業界が多いですか?
渡邉:今のところ製造業やIT系、情報通信系が目立ちますね。お客様への提案にAIを活用したいけれど実際どう対応したらいいのかわからないのでまずはAIMINAで試したいというケースが多いですね。このほかサービス、医療、流通、商社や物流などのユーザーもいます。
――お客様のソリューションにAIMINAを活用されているんですね。実際に利用されているユーザーの反響はどうでしょうか?
村松:AI導入を進めるにあたって社内で予算を取るのに役立っているようですね。自社が持つデータを使ってAIで業務改善やサービス向上できそうか幅広く検証できるとして重宝されています。
渡邉:AIMINAは特化型ではないので、ひとつの会社の中にあるさまざまなニーズに対応することができると評価していただいています。
村松:AIを積極的に活用されている企業の中にもAIの主管や先端技術部門以外までAIをマスターしているとか使いこなしているケースは実際それほど多くありません。
――日常業務の多くは先端技術を使うまでもないかと思います。AIMINAで解決できる部分は大きいでしょうね。
村松:ですから、ぜひ現場の方々にAIMINAをお試しいただければと思います。
【編集部 後記】
「AIはExcelくらい誰もが使うツールになる」と予測する識者もいたが、AIMINAがあれば確かに多くの人が手軽にAIを活用できるようになりそうだ。
まだまだ発展途上の分野だけに「学べる」機会が備わっているのも便利である。インタビューの後編では土木・建設業の活用例など、具体的な使用イメージについて語っていただく。
SB C&S株式会社
東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝オフィスタワー
https://cas.softbank.jp/
「AIMINA(アイミナ)」公式サイト
https://aimina.com/
WRITTEN by
三浦 るり
2006年よりライターのキャリアをスタートし、2012年よりフリーに。人材業界でさまざまな業界・分野に触れてきた経験を活かし、幅広くライティングを手掛ける。現在は特に建築や不動産、さらにはDX分野を探究中。