コラム・特集
高橋 奈那 2021.12.27

【建設DX展 東京 レポート vol.2】新しいアプローチで現場の変革に挑むソリューション6選!

CONTENTS
  1. 資材は、ゼロから造ってデザインする時代に。倉敷紡績の「3Dプリンティング」
  2. 作業中の動作をサポート、身体にかかる負荷を軽減。キングジムの「作業アシストスーツ X /作業アシストベスト」 
  3. 位置情報とAIを活用し、リアルタイムで情報を更新。デジタルツイン技術「SYNC WORLD ENGINE」/ADAAC株式会社&會澤高圧コンクリート株式会社
  4. 測量業務はロボットが行う時代に?「Spot®と3DレーザスキャナTrimble X7」
  5. 技術者の目に代わり、現場を細部まで数値化。精度と効率を底上げする、日立ソリューションの画像解析技術。
  6. 高速通信を活用したサービスからネットワーク構築支援まで!現場の効率化を通信で叶える「NTT docomo 5G回線」
『建設DX展 東京』が2021年12月6日〜8日の3日間、東京ビッグサイトで開催された。2,100もの製品・ソリューションが集う会場には、最新のテクノロジーをひと目見ようと多くの来場者が押し寄せ、9月に開催された「関西展」以上の盛り上がりを見せた。


今回、とくに来場者の目を惹いていたのが、最新のデジタル技術を活用した展示物だった。そこで本記事では、新しいアプローチで現場の変革に挑む、6ブースを紹介する。

資材は、ゼロから造ってデザインする時代に。倉敷紡績の「3Dプリンティング」


現代アート作品にも見えるこちらの展示物は、住宅用外装化粧材や断熱材に強みを持つ「倉敷紡績」と「竹中工務店」の共同企画作品。フランスに拠点を置く建築用3DプリンターメーカーXtreeE社と倉敷紡績が共同で開発した特殊な3Dプリンターを用いて出力されたものだ。



3DCADで作成したデザイン通りに、複雑な曲線や繊細な流線型がセメント系の材料で忠実に表現されている。目的に応じた造形を、必要最低限の材料から創り出せる建築用3Dプリンターの登場は、新しいデザインの可能性を広げるとともに、建築資材使用量の最適化や材料削減にも貢献することが期待できる。



原材料の不足による工期遅延や、建築費用の増加などを防ぎ、最適解を導き出す新たな手段となるだろう。2022年中に建築物の施工をめざし、現在実証実験が進められている。


◎倉敷紡績 : https://www.kurabo.co.jp/news/newsrelease/20211203_1076.html


作業中の動作をサポート、身体にかかる負荷を軽減。キングジムの「作業アシストスーツ X /作業アシストベスト」 


土木・建設現場には、身体を酷使する作業が山程ある。無理な姿勢で長時間の作業をするうちに、腰や膝を痛める方も多い。つらい腰痛対策のため、身体の負担を軽くするアシストスーツが、キングジムから登場した。


本体は軽いメッシュ仕上げで、作業着の上にベストを羽織るような感覚で装着できる。腰パーツ・ヒザパーツ、肩ベルトの3パーツからなる「作業アシストスーツ X」と、腰を重点的に補助する「作業アシストベスト」の2タイプがあり、どちらの製品も背骨に沿って内蔵されたステンレス製のバネ(スパイラルボーン)が背中から腰までの負担を軽減する。


X字構造のショルダーベルトがついた作業アシストスーツ Xには姿勢矯正機能があるため、姿勢が原因となる腰痛を未然に防いでくれる。素材には特殊なメッシュ生地を採用しており、この生地が筋肉や関節の動作を面でサポートする。実際に、デジコン編集部も試着させてもらったが、腰回りのサポート力が強く、長時間の作業にはとても重宝しそうに感じた。



泥や汗の付着が気になるところだが、自宅でも簡単に洗えるので、常に清潔に保つことができる。その実力を試そうと、ブース内は試着の順番を待つ来場者で賑わっていた。フィジカルをサポートする働き方改革のツールとして、導入をしてみてはいかがだろうか。

◎キングジム 作業アシストスーツ X:https://www.kingjim.co.jp/sp/assuitx/
◎キングジム 作業アシストベスト:https://www.kingjim.co.jp/sp/assuit/


位置情報とAIを活用し、リアルタイムで情報を更新。デジタルツイン技術「SYNC WORLD ENGINE」/ADAAC株式会社&會澤高圧コンクリート株式会社


ディスプレイとゴーグル、小さな模型のみが展示されているように見えるこのブース内には、リアルとデジタル、2つの情報軸をもつ世界。いわゆるデジタルツインが構築されている。


通常のデジタルツイン構造と異なるのは、AIのディープラーニング機能により、常に情報が書き換えられている点だ。現実世界の変化を位置情報から瞬時に読み取り、デジタル情報へ反映していく。



当ブース内では、この原理を利用した「建設現場をクローン管理するシステム」と「MRのドローンが自律航行しているシステム」を体験することができた。


「MRのドローンが自律航行しているシステム」は、ブース内のビル群の模型を避け、ドローンが安全に飛行できるルートを作成するというもの。MR上でドローンが飛行するデジタル映像を見ながら、目の前のビルを動かすと、すぐにAIが安全ルートを再計算して、ビルにぶつかることなく、飛行を続けることができる。


測量や検査業務でのドローン利用は進んでいるが、事故や落下の危険が伴うため、常に操縦者による監視が必須だ。しかし、もし当システムが実用化できれば、ドローンの安定した自律飛行が実現し、測量や検査業務の完全無人化も現実のものとなるかもしれない。


変化する位置情報を元に、リアルタイムで最適解を導き出すAIの組み合わせは、建機の自動運転やロボット活用への転用もできるだろう。複数台のロボットや建機がお互いに干渉しないよう作業するプログラムや、建設現場における安全対策など、活用法は無限。SYNC WORLD ENGINEから、どのようなソリューションが誕生するのか、今後の動向にも注目したい。

◎SYNC WORLD ENGINE:https://www.syncworldengine.com/


測量業務はロボットが行う時代に?「Spot®と3DレーザスキャナTrimble X7」


メディアなどでも目にする機会が増えてきた、四足歩行ロボット犬「Spot®」。健気に働く姿が印象的で、なんだか妙に愛着の湧く存在だ。Trimble社の測量センサーと、Boston Dynamics社の製造する自立四足歩行ロボットSpot®とのコラボレーションにより誕生したのが、ロボット犬を測量に活用するプロジェクトだ。


これは、3DレーザースキャナTrimble X7を搭載Spot®が、人の立ち入りが難しい現場や広域に及ぶ現場の測量を、自動で行うというもの。高度な制御アルゴリズムにより、バランスを撮りながら歩行するSpot®は、四方に設置されたカメラで、障害物を回避しながら進むため、多少の障害物や傾斜のある草地などでも、安定して測量が可能だという。


予めセッティングした走行ルートに沿った測量や、Wi-Fiを介した遠隔操作など、操作方法は現場に合わせて選ぶことができる。


測量技術者と複数台のSpot®とで作業を分担したり、別の作業を進めている間に現場を歩き回っていたSpot®が点群の計測を完了している……。そんなSF映画のワンシーンのような未来も、そう遠くなさそうだ。

◎株式会社ニコン・トリンブル:https://www.nikontrimble.co.jp/products/product_detail.html?tid=403


技術者の目に代わり、現場を細部まで数値化。精度と効率を底上げする、日立ソリューションの画像解析技術。


日立ソリューションのブースでは、AIによる画像解析技術を検査・管理業務に活用する製品が展示されていた。同社の製品に共通していたのは、誰でも簡単に使えて、少人数でも短時間で作業が完了するという特徴だ。その中から、画像解析技術を活用した3製品を紹介する。


『360度画像 管理・共有サービス StructionSite』

360°カメラで撮影した現場の画像や映像を、図面上で管理・共有できるクラウドサービス。現場の作業進捗や状況の詳細を遠隔で確認でき、Note機能を使えば付箋を貼るように画像データ内にメモを書き込むことができる。

映像から画像を書き出せるので、現場写真で抑えるべき要素を把握していない新人作業員にも撮影を任せることができる。また、画像はクラウド上に自動で整理されるので、膨大なデータの整理も手間や時間をかけずに完了する。


『GeoMation スマートフォン活用3D計測ソリューション』

次に紹介するのは、スマホで簡単に体積計測ができるソリューションだ。難しい手順は一切なし。高精度測位技術と画像解析技術を活用することで、動画から位置情報付の3次元データが生成されるという仕組みを採用しているので、測量の経験や知識がない作業員でも、体積の計測や点群データの計測ができる。

『Geo Mation 鉄筋出来形自動検測システム』

鉄筋の出来形検測作業を大幅に短縮するソリューション。デプスカメラ(対象物までの距離を計測するカメラ)を搭載したスマートデバイスで測定箇所を撮影すると、配筋の間隔が自動で計測され、結果をデータ化して出力するというもの。


多段配置された鉄筋も正確に抽出できるので、撮影するだけで計測作業は完了する。従来型のメジャーを使った手作業計測では60分かかっていた作業が、およそ20分で完了するため、検測精度の向上だけでなく工期短縮にも役立ちそうだ。

◎日立ソリューションズ :https://www.hitachisolutions.co.jp/products/search/construction.html


高速通信を活用したサービスからネットワーク構築支援まで!現場の効率化を通信で叶える「NTT docomo 5G回線」


5G回線で建機をつなぐことで、施工現場は何十倍にも効率化されることは、デジコン読者のみなさまならご存知だろう。しかし、いざ5Gを活用しようとしても、まだまだ導入へのハードルは高いのが現実だ。5Gを現場で活用したいと考える事業者に向けて、NTT docomoでは、多様なサービスが紹介されていた。


『画像認識 EDGEMATRIX』

こちらは、映像撮影・映像解析AIサービスと検知アラートをワンパッケージにしたサービスだ。膨大なデータ量を迅速に処理できる「エッジ AI」が、撮影された映像を解析し、異常発生時にアラートで即座に知らせてくれる。


AIサービスの種類や使用するカメラ、AIを搭載した「Edge AI Box」の機器タイプは、ニーズや環境に応じてカスタマイズが可能だ。現在提供されているAIアプリは、現場の炎と煙検知・侵入検知・ナンバープレート検知など。


使用カメラが4 Kや8K画質のものであっても、データ処理速度には影響しない。また、「Edge AI Box」には防塵・防水、落雷対策に対応した屋外モデルもあるため、自然環境下でも使用することができる。

◎EDGEMATRIX:https://www.nttdocomo.co.jp/biz/service/edgematrix/

『XRソリューション Avatour』

Avatourは、5G通信を介して現場と遠隔でつながる、360°立体空間映像生成・配信ソリューションだ。生成した空間映像は、スマートフォンやVRヘッドセットへの出力できるため、遠く離れた会議室からも、現場で点検作業に立ち会っているかのような臨場感で、現場の状況を細部まで確認できる。


音声通信以外に、チャット機能にも対応。360°映像に、直接メモを書き込めるので、映像そのものを議事録として残すこともできる。映像情報と音声通信を伴う大容量のデータ通信には、5G通信を採用。遅延のない円滑なデータ通信が、遠隔でもスムーズなやりとりを可能にしているのだ。

◎AVATOUR:https://www.nttdocomo.co.jp/biz/service/avatour/

『docomo sky』

docomoの提供するドローン事業だ。ドローンや機材がない、飛行スキルのあるパイロットがいない、高度な解析ソフトがない事業者でも、業務にドローンを活用できるのがこのサービスの最大の魅力だ。


ドローンから撮影した画像や映像は自動でクラウド上にアップロードされ、目的に応じた解析が可能だ。従来型のドローン代行サービスは、撮影と撮影データの納品のみのものが主流だったが、当サービスでは、撮影や保守点検業務に加え、データ管理やAI解析、レポート作成までをワンパッケージで行う。

現在提供しているサービスは、鉄塔などの構造物からサビを検出するサービスのみだが、今後は、3D点群データ生成サービスも順次提供予定。ますます建設業の力強く支えることになりそうだ。

◎docomosky:https://www.docomosky.jp/

『5G ネットワークソリューション』

ICT施工のために機器同士を高速回線でつなごうとしても、5G回線の開設には特殊な手続きが必要になるため、実用化へハードルは高い。5Gの現場活用を推進するべく、docomoでは、施工現場の規模や目的ごとに選べる3タイプの5Gネットワークソリューションが提供されている。


・キャリー5G

Wi-Fiスポットのような手軽さで、希望する現場に5Gエリアを設置するサービスだ。大規模な工事は不要。5G通信機器を専用の台車に搭載し、工事現場に設置するだけで、5G回線を安定して使用できる。貸し出し期間は1日〜7日と短めに設定されているため、長期設置希望の場合は別途相談が必要だが、特定の作業にのみ5G回線を活用したい場合などは、非常に便利なサービスだ。


◎キャリー5G:https://www.nttdocomo.co.jp/biz/service/carry5g/

・ローカル5G構築支援


5G回線のネットワーク構築には、エリア設計や免許申請などの手続きや専門知識が必要になる。そういった事務手続きを代行するサービスが、ローカル5G構築支援だ。どのような業務に5G回線を使いたいのか、使用頻度や利用範囲などを丁寧にヒアリングし、最適なエリア設計を提案。必要機材の調達、免許申請などはすべてdocomo が担当してくれる。

◎ローカル5G構築支援:https://www.nttdocomo.co.jp/biz/service/local5g/

・PicoCELA マルチポップWi-Fi

5Gの高速大容量通信をWi-Fi回線で使いたい!という要望に応えるのが、当サービス。一般的なWi-Fiの場合、機材の台数分LANケーブルが必要になるが、PicoCELAなら、LANケーブルは最初の1台のみで良い。


配線や設置機器がシンプルなので、設置場所を選ばない。一般的なWi-Fiでは、マルチホップすると3台以下でも通信速度が落ちてしまうが、当サービスなら10台以上の機器をマルチポップしても、充分な通信速度を維持できるため、複数台のICT建機を同時に接続することも可能だ。

◎PicoCELAマルチポップWi-Fi:https://www.nttdocomo.co.jp/biz/service/pmwifi/


【編集部 後記】

「建設DX展 東京 」に出展されていたソリューションを振り返り、改めて土木・建設業界が、泥だらけになって働く従来のイメージから、最新技術を駆使するスマートな業界へと変化しつつあることを実感した。

次回の建設DX展の開催日程は、すでに決定している。来年の今頃、展示ブースのトレンドはどこまで変化しているのだろうか。デジコンでは、急速に進む技術開発の「現在」を、今後も追いかけていく。

次回の建設DX展 開催日程
関西展(インテックス大阪):2022年9月28日(水)〜30日(金)
東京展(東京ビックサイト):2022年12月5日(月)〜7日(水)


取材・編集:デジコン編集部 /文:高橋奈那 / 撮影:宇佐美 亮
WRITTEN by

高橋 奈那

神奈川県生まれのコピーライター。コピーライター事務所アシスタント、広告制作会社を経て、2020年より独立。企画・構成からコピーライティング・取材執筆など、ライティング業務全般を手がける。学校法人や企業の発行する広報誌やオウンドメディアといった、広告主のメッセージをじっくり伝える媒体を得意とする。

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