コラム・特集
國廣 愛佳 2025.10.27

山梨県の土木・建設会社トップ15社を紹介! 〜自然環境を踏まえた災害対策と暮らしを支えるインフラ整備〜

CONTENTS
  1. 1. 早野組
  2. 2. 内藤ハウス
  3. 3. 地建工業
  4. 4. 長田組土木
  5. 5. 国際建設
  6. 6. 山英建設
  7. 7. 芙蓉建設
  8. 8. 植野興業
  9. 9. 富士急建設
  10. 10. ゼロ
  11. 11. 飯塚工業
  12. 12. 日経工業
  13. 13. 羽黒工業
  14. 14. 齋藤建設
  15. 15. 昭和建設
富士山や南アルプスなど日本有数の自然資源を誇る山梨県。

その地形の特性から、災害対策や交通インフラの整備が重要視されており、中央自動車道やリニア中央新幹線の整備、都市部と中山間地域をつなぐ道路網の保全など、大規模かつ多様なプロジェクトが展開されている。

県内の建設・土木会社は、地域の安全と利便性を守る中核となる存在である。

注目したいのは、山梨県庁内に「DX課」が設置され、積極的に「地域内発型DX」の推進に取り組んでいる点だ。

県のDX推進計画には、公共土木施設の状態把握や点検においてドローンやセンサーを活用し、施設の長寿命化や予兆検知の実現を目指す具体策が明記されている。

また、建設工事全体の生産性向上に向けた方針も盛り込まれており、i‑ConstructionやBIM/CIMによる3次元データの活用、ICT施工、無人化やリモート管理の促進、市町村への技術支援なども掲げられている。

こうした行政の後押しを背景に、県内の企業では、ドローンを含むICT建機や施工管理システムの採用が進んでおり、地方の地形条件にも合う小規模ICT施工への対応など、各エリアの実情に根ざしたDXも取り組まれている。

本記事では、そんな山梨の総合土木・建設業界の最前線にいる15社を紹介する。

各社の歴史、特徴的な技術、代表的なプロジェクト、そして最新の取り組みなどを詳しく見ていこう。

1. 早野組


1887年創業の早野組は、山梨県甲府市に本社を構える老舗の総合建設会社だ。130年以上にわたり地域のインフラ整備に携わってきた歴史と実績をもち、建築・土木・舗装工事を中心に、幅広い分野で高い信頼を築いている。設計部門として早野組一級建築士事務所を社内に設けており、民間主体の建築の企画及び設計・監理を主な業務としていることも特徴だ。

(画像元:早野組WEBサイトより)

山梨県立図書館、県議会議事堂委員会室棟の建築工事、甲府市内の遊亀公園第1期整備の土木工事をはじめ、公共性の高い事業も多数出かけ、山梨県建築文化賞奨励賞などを受賞している。

また、ICT技術の活用にも積極的で、3次元設計データとGPSを活用した自動舗装施工や、ドローンによる測量の効率化、BIM・CIMを用いた情報共有によるヤード計画や危険個所の把握など、生産性と施工の安全性向上に取り組んでいる。



2. 内藤ハウス


1967年に創業し、2年後の1969年に株式会社を設立した内藤ハウス。山梨県韮崎市に本社を置き、創業と同年に東京支店を開設して以降、現在では北海道・東北エリアから九州・沖縄エリアまで、全国13拠点を置いて戦略的に事業エリアを広げている。

システム建築・プレハブ、自走式立体駐車場の設計・施工を軸に、鉄骨建築のノウハウを活かした在来建築工法による設計・施工も手がけており、設計から製造、施工、アフターサービスまでを一貫して担う体制により、効率性と品質を両立している。

(画像元:内藤ハウスWEBサイトより)

近年では大阪・関西万博ルクセンブルク館の建設にも携わるなど、先進的な案件にも積極的に取り組んでいる。災害時の仮設建築物など、社会的な役割も幅広く果たしているほか、子育て支援施設などのPPP/PFI事業も展開している。

DXの推進においては、NTT東日本と共に2社共創型のワーキング体制を構築している。工事・技術本部ごとに課題を抽出・検討する分科会と、全体方針を議論・決定する親会を連携させ、現場レベルから全社的な戦略遂行までを支える仕組みを整備している。

2024年からは「DXロードマップの進捗率」や「営業利益率10%の達成」を定量的な指標とし、確実な実行に向けた取り組みが進行中だ。



3. 地建工業


1916年に土木工事請負業を創業し、1977年に株式会社となった地建工業は、山梨県甲府市大里町に本社を構える地域密着型の総合建設企業だ。

土木事業、建設事業のほか、一級建築士事務所として企画・設計・監理、そして不動産事業まで幅広い分野に対応している。

特に、河川や道路の改修、橋梁の補修といった公共インフラ整備で豊富な実績を有し、地域の暮らしを足元から支えている。

(画像元:地建工業WEBサイトより)

地域の暮らしへの貢献は工事だけに留まらず、総合建設企業としてのノウハウなどを活かした取り組みも行っている。

2023年には甲府市などと災害対応への備えを目的として協定を結び、会社所有の敷地を、避難場所として無償提供するほか、有事には発電機や寝袋などの防災備品の貸し出しも対応。

さらに、ドローンを活用した災害状況のリアルタイム表示といった遠隔情報共有システムを通じて、地域との共助・協働を支える仕組みづくりを行っている。

地建工業のウェブサイトには、地域の防災相談窓口として問い合わせフォームも設けられており、「大里地域防災センター」としての機能を果たしている。



4. 長田組土木


1905年に長田組として創業した長田組土木は、山梨県甲府市に本社を構える老舗の総合建設会社だ。

1911年には甲府市役所土木請負業鑑札第一号となり、明治期の中央本線鉄道敷設工事をルーツに、120年近くにわたり地域インフラを支え続けてきた。

(画像元:長田組土木WEBサイトより)

事業内容は公共施設や教育施設をはじめ幅広い分野での建設工事のほか、舗装、上下水道などの土木工事も手がける。

代表的な実績には、山梨大学シミック基礎医学研究施設新営工事や中央市役所玉穂庁舎改修工事などがある。

次世代の人材育成にも注力しており、新卒採用ページでは社員インタビューや1日の業務フローなどを紹介。

長く働ける会社としての魅力発信にも力を入れている。「信用と技術」を社訓に、地域社会とともに歩み続ける企業だ。



5. 国際建設


国際建設は、1947年の創業当初は東京都千代田区に本社を構え、甲府には出張所を設置していたが、1950年に本社を甲府市へ移転。

以来、山梨県を拠点に甲信地域と首都圏で70年以上にわたって、総合建設会社として地域社会の発展に貢献してきた。

技術士や一級土木施工管理技士などの専門資格を有する人材が在籍しており、高度な技術力と提案力に定評がある。

(画像元:国際建設WEBサイトより)

国土交通大臣や甲府市からの表彰歴もあり、地域との信頼関係を大切にする企業として知られている。

土木・建築・リニューアル工事を中心に、都市開発やコンサルティング業務も展開している。特に、鉄道、港湾、道路をはじめとする交通・国土建設に関する調査や計画、測量、設計請負など、上流工程から施工までを幅広く担える体制が強みだ。

近年の工事実績として、甲府市内の史跡武田氏館跡総合案内所建設工事、市立美術館大規模改修及び増築工事などのほか、東京都内でも港区みなと保健所庁舎など多数の工事を手がけている。



6. 山英建設


1971年に創業した山英建設は、山梨県都留市を拠点とする総合建設業者だ。

社会インフラの構築を柱として事業を展開しており、道路やトンネルといった土木工事全般に加え、下水道シールド工事やダム工事といった規模感のものから、一般家庭の給排水工事や道路舗装の穴埋めまで幅広く対応している。


(画像元:山英建設WEBサイトより)

国道舗装工事、急傾斜地崩壊対策工事など、山梨県内で豊富な実績がある。

また、建築事業も手がけており、公共施設や商業施設、一般住宅の施工、庭や駐車場など屋外スペースの有効利用なども行っているほか、自社でアスファルト合材製造プラントを構えており、製造されたアスファルトは、山梨県、神奈川県内、静岡県内の道路で利用されている。また、産業廃棄物(建設廃材)の収集運搬業と処分業も行っている。



7. 芙蓉建設


芙蓉建設は、1975年に富士屋土木として創業し、1997年に商号変更を行なった総合建設会社だ。山梨県富士吉田市に本社を置き、建築・土木・リフォームを中核として多角的な事業展開を行っている。

建築分野では、システム建築によるコストパフォーマンスの高い施工を得意とし、「いいものを、より安く、より早く」という顧客ニーズに応える体制を整備。

土木分野では、宅地や公園の造成工事から、国・県・市町村による大規模土木工事、土地開発、防災土木まで幅広く対応している。



さらに、リフォームやリノベーションも手がけており、高精度赤外線を用いた非破壊検査によって建物診断を実施し、店舗・工場・住宅などの改修提案を行っている。

近年の施工事例として、山梨県道志村から発注を受けた道志村役場庁舎、富士五湖広域行政事務組合から発注を受けた富士五湖消防本部などがある。

土木工事では、道路や治山などのインフラ工事のほか、山中湖明神山パノラマ台展望デッキや富士山ジビエセンター外構工事など、観光地に関連する事例もある。

また、ホテル、旅館、飲食店、有料老人ホームなどの運営も行っており、地域貢献型の事業を展開していることが特徴の企業だ。



8. 植野興業


植野興業は山梨県甲州市に本社を置く総合建設会社で、2025年4月には、1951年の創業から創立70周年を迎えたばかりだ。

安全性と景観の問題を徹底的に追及することを掲げる土木部では、公園、下水道などの都市基盤整備をはじめとして、トンネル、橋梁、治山・治水、さらに民間の大規模開発など幅広い分野に対応する。最新技術も積極的に導入し、効率的かつ高品質な施工を実現している。

(画像元:植野興業WEBサイトより)

建築部門では、学校や体育館などの公共施設、銀行や店舗といった商業施設から、個人住宅まで多様な建築ニーズに応えている。

注目の施工実績として、2024年に竣工した笛吹川フルーツ公園くだもの工房の改修工事が挙げられる。



9. 富士急建設


富士急建設は、富士急グループに属する山梨県富士吉田市の総合建設会社だ。1955年に設立され、富士急開発からの社名変更を経て、地域に根ざした活動を続けている。

建築、土木、造園の三本柱で事業を営んでおり、建築工事では、富士山世界遺産センターや山梨県立リニア見学センターどきどきリニア館といった官公庁案件の経験から培われたノウハウを持ち、山中湖村平野ゆいの広場ひらり、富士北麓公園屋内練習走路、山梨県立富士山世界遺産センターなどで山梨県建築文化賞に輝いている。

(画像元:富士急建設WEBサイトより)

また、別荘の多い土地柄を踏まえ、ログハウスやツーバイフォー工法の輸入住宅、別荘建築にも注力しており、ニーズに寄り添った住まいづくりにも注力している。

一級造園施工管理技士などが在籍しており、富士急ハイランドをはじめ、富士急グループ施設での緑化管理、公園整備といった環境づくりにも対応している。



10. ゼロ


山梨県甲府市の南甲府駅近くに本社を置くゼロは、2000年設立と比較的新しい企業だ。

建設部では、一般建設から設計、施工、店舗リフォームや原状回復、さらには看板作製・設置、一般土木や建物解体を手がける。

(画像元:ゼロWEBサイトより)

施工実績として、早野組、植野興業とともに行なった富士川町新庁舎建設建築工事、町道の橋台新設工事、河川改良工事などがある。

また、環境部も設けており、山梨県内を中心に産業廃棄物運搬、リサイクル資源収集などにも取り組んでいる。



11. 飯塚工業


飯塚工業は、山梨県笛吹市に本社を構える1953年創業の総合建設会社だ。

土木、建築、不動産の各分野に対応し、公共インフラや福祉施設、住宅建設といった幅広い実績を持つ。自社施工と地域密着をモットーに掲げており、創業以来、地元で技術と信頼を積み重ねてきた。

(画像元:飯塚工業WEBサイトより)

土木分野では新東名高速柳川工事用道路工事や山宮川橋梁上部工事などで表彰歴を重ね、建築では山梨県立博物館の外構工事なども手がける。

ユニークな取り組みを多数行っているのが飯塚工業の特徴だ。

例えば、バックオフィスからの支援者として、現場とオフィスの架け橋となる「建設ディレクター制度」を導入したり、女性技術者の快適な職場づくりを目指した現場パトロール隊「i-bonds(アイーボンズ)」の設立など、先進的な働き方にも素早い対応を見せている。

さらに、3次元測量技術においては、関東地方整備局よりICTアドバイザーとして認定を受けており、人材確保の裾野を広げる意味でも、ドローンの操縦体験や重機見学会、インターンシップの受け入れなどを通じて、地元の子どもたちや学生に建設業の魅力を発信する活動も行っている。



12. 日経工業


1953年創業の日経工業は、山梨県甲府市に本社を構える総合建設会社だ。建築・土木・設備工事を柱に、地域のまちづくりに貢献してきた。

事業分野は、公共施設、教育施設、医療・福祉施設、生産施設、事務所・商業施設、住宅と多岐にわたり、確かな施工品質ときめ細やかな対応で信頼を築いている。

(画像元:日経工業WEBサイトより)

施工実績には、小瀬スポーツ公園センターモニュメントや山梨県立大学、山梨県立科学館、道の駅富士川など県内を代表する建築が名を連ねる。

また、令和3年には「山梨県子どものこころサポートプラザ」で山梨県建築文化奨励賞を受賞し、社会的意義の高い建築にも力を入れている。



13. 羽黒工業


山梨県甲斐市に本社を構える羽黒工業は、1974年に創立された地域密着型建設業者だ。

土木一般工事を主軸としており、加えて、石工事業、舗装工事業、鳶・土工工事業、浚渫工事業、鋼構造物工事業、塗装工事業、水道施設工事業、解体工事業にも対応する専門性の高さが特徴となっている。

安全・品質・環境の調和を掲げたものづくりで定評があり、山梨県県土整備部からの優良工事施工功労表彰を多数受賞するなど、高い評価を受けている。

(画像元:羽黒工業WEBサイトより)

ドローンをはじめとするICTの活用も進めており、例えばPC200iという機器を導入し、GNSSアンテナと基準局から得た位置情報と設計データをもとに、重機操作をセミオート化で行い、円滑な掘削作業に活かしている。

技能教育にも力を入れており、重機オペレーターや土木施工スタッフなど多様な職種が活躍し、地元での信頼感を基に成長を続けていている。



14. 齋藤建設


山梨県甲府市に本社を構える齋藤建設は、1946年に創業、1953年に法人化を果たした総合建設会社。

経営理念に「地域を守り、地域を支え、地域とともに発展する」を掲げ、建築・土木の両部門で地域の暮らしとインフラを支えている。

建築では保育園や公共施設、土木では国道や河川関連工事など、地元に密着した案件を多数手がけてきた。

近年では、ドローンによる上空からの施工確認や、レーザースキャナーによる3D計測など、最新技術の導入にも積極的で、生産性・安全性の向上の両立を図っている。

(画像元:齋藤建設WEBサイトより)

施工実績には、社会福祉法人ゆうゆう保育園キヅキ、清里の森シンボルゲート、国道140号橋下部工事などがあり、地域の景観と機能を兼ね備えたものづくりに取り組んでいる。

若手技術者の育成にも力を入れており、チームワークを大切にする社風のもと、働きがいのある職場づくりにも努めている企業だ。



15. 昭和建設


1951年創業、山梨県甲州市の昭和建設は、県内全域を中心に官公庁や民間からの幅広い工事を請け負っている。

土木工事を主軸に、舗装・造園・解体・水道施設工事など多彩な施工に対応しており、例えば、西関東連絡道路の万力トンネルや荒神山トンネル、中央自動車道都留ICの整備といった、大規模インフラの施工実績も多数重ねている。

(画像元:昭和建設WEBサイトより)

ITとコミュニケーションで現場とオフィスをつなぐ「建設ディレクター」の資格を取得しており、ICTの導入による業務効率化や働き方の多様化にも積極的だ。

ウェブサイトで公開している社内インタビューの中には、社内唯一の女性現場監督として働く一級土木施工管理技士もおり、山梨県内の建設産業で働く女性による団体「けんせつ小町甲斐」の初代代表を勤めているなど、働き方の観点でも存在感を放つ企業だ。




WRITTEN by

國廣 愛佳

創業支援や地域活性を行う都内のまちづくり会社に勤務後、2019年よりフリーランス。紙面やwebサイトの編集、インタビューやコピーライティングなどの執筆を中心に、ジャンルを問わず活動。四国にある築100年の実家をどう生かすかが長年の悩み。

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