- タワークレーンを遠隔操作するコックピット。竹中工務店の「Tawaremo」
- 建設ITワールド 家入龍太氏のユニークな企画!3D都市モデルの可能性をゲーム感覚で知る「プラトーで遊ぼう!」
- 目的に合わせてCIMソフトウェアを拡張。維持・管理にも役立つ「CIMカスタマイズサービス」
- 膨大な書類データを一元管理。データベース型施工情報共有システム「WIZDOM」
- 土木・建設現場における、AI活用をもっと身近にする。Fast Labelの「アノテーションプラットフォーム」
- 新人研修にVRを活用。トレーニングコンテンツ開発ツール「INTERACT」
- 労務管理をペーパーレス化。「Smart HR」で、バックオフィス業務を効率化
- スマホでダンプが呼べる!残土処分問題をクリアにする「DAMPOO」
2021年9月29日(水)〜10月1日(金)の3日間、「建設DX展 - 関西展 -」がインテックス大阪で初開催された。当イベントは、BIM/CIM、CADシステムや、ICT建機、測量ソリューションなどを開発するICT関連製品メーカーが、ゼネコンや建設会社、建設コンサルタントといった建設関係企業に、最新のソリューションや技術をPRする、大規模な商談展だ。
会場となったインテックス大阪には、連日多くの来場者が訪れ、製品の比較検討や技術相談などが盛んに行われていた。一つひとつのブースを訪れるうちに、“土木現場の生産性向上に貢献するソリューション”と一口にまとめることが難しいほど、さまざまな切り口をもつ製品が存在していることに、改めて気付かされた。そこで本記事では、数ある企業の中から、独自性の光る8つの出展ブースを紹介していく。
一見、SF映画に出てきそうなこのプロダクトは、タワークレーンを遠隔で操作するためのコックピット「TawaRemo」だ。竹中工務店と鹿島建設、そしてアクティオとカナモト、4社共同で開発された「TawaRemo」を使えば、どこからでもタワークレーンの操作が可能になる。
コックピットには、クレーン頂部の運転席に設置された複数台のカメラ映像や、荷重などの動作信号や異常信号をリアルタイムで映し出すディスプレイが設置されており、オペレーターは画面を確認しながら、手元のレバーやフット・スイッチを使いクレーンを操作していく。タワークレーンに設置されたジャイロセンサーが振動や傾きを検知すると、まるでレーシングゲームのように、シートが連動して動く仕組みを採用しているため、現場で作業をしている感覚をリアルに体験しながら操作をすることができるそうだ。
現場からコックピットへのデータの転送はネットワークを介して行われるため、現場からどれほど離れていても、問題なく操作が可能だ。また、同一箇所に複数台のコックピットをまとめて設置することもできるという。たとえば、数名の若手オペレーターを熟練オペレーターが指導しながら、複数現場の作業を同時に行うことも可能だろう。
今後、5G回線への対応も検討しているとのこと。高速通信に対応することで、さらなる利便性の向上が期待できる。
約150インチの巨大スクリーンに映し出されているのは、国交省が主導となり開発された超大型規模の都市3DモデルPLATEAU(以下、プラトー)だ。
当ブースでは、株式会社アナザーブレイン、株式会社ホロラボ、そして大手建設設計事務所の有志建築家の協力のもと作成された「超低空フライトシミュレーター」や、建築ITワールド家入 龍太氏が作成した建造物のモデルをプラトー内に配置した「バーチャル大阪万博(夢洲)」、「ビル破壊ゲーム」など、プラトーを活用した遊び心あふれる3つの体験型コンテンツを展示。プラトーの特性を活かし、当コンテンツにはあらゆる都市情報が活用されていた。
たとえば、「超低空フライトシミュレーター」には、実際に大阪の街を歩いて調査した町並みや風景などの視覚情報がモデル内に反映されている。そのため、本来プラトー上では白いブロックで表現されるビル群を、3D画像のようなリアルな町並みとして楽しむことができるのだ。
また、パニック映画の怪獣気分で大阪のビル街を大胆に壊していく「ビル破壊ゲーム」では、BIM/CIMのようにビルの階数などの属性情報がマップ内に組み込まれている。その属性情報をもとに、合計で何階分のビルを破壊したかを集計し、採点される仕組みだ。ゲームの挑戦者がこぞって高得点を狙い、高層ビルを夢中で破壊する様子が印象的だった。
都市計画や防災など、行政利用のイメージが先行しがちなプラトーだが、ユニークな当ブースの展示をきっかけに、デジタルツインの新しい可能性を感じた来場者も多かったのではないだろうか。今後も建設業に限らず、商業やエンターテインメントなど、幅広い分野での活用を期待したい。
2023年に予定されているBIM/CIMの原則適用に備え、BIM/CIM導入に向けた具体的な検討をはじめた事業者も多いのではないだろうか。
こちらのCAPAのブースではCIMをさらに便利に使いこなす、カスタマイズサービスが紹介されていた。構造物のチェックや積算・見積書の作成システム、図面ファイルの書き出し、プロジェクトチームの連絡・共有ツールや、進捗管理ツールなど、あらゆる業務フローをサポートするきめ細かな拡張サービスが展開されている。
たとえば「Civil 3D」は、現状の業務フローから課題を分析し、改善案を提案するサービスだ。進捗の確認と工事計画の見直しを綿密に行うことで、コスト削減や工期の短縮などにつながる。また、時間をかけて体得してきた『勘やコツ』など、属人化されていた技術をデータとして見える化し、分析することで、作業精度の向上に役立てることもを可能だという。
「施工管理」は、安心・安全面の維持・管理だけでなく、より効率的なコスト設計や、今後の設備投資計画、修繕計画の見直しなど、多面的な検証を可能にする拡張サービスだ。これらのカスタマイズサービスは、現在利用している他システムとの連携も可能。プロジェクトの内容にあわせてBIM/CIMをカスタマイズすることで、さらなる生産性の向上に役立てることができるだろう。
長期に渡る土木・建設工事には、膨大な書類処理業務がつきものだ。プロジェクトの規模が大きくなるほどプロジェクトメンバーが増え、情報共有や確認作業だけでもかなりの労力を要する。
株式会社アウトソーシングテクノロジーズが提供する施工情報共有システム「WIXDOM」は、膨大な書類やデータを一元化し、書類作成、書式変更、共有、申請・承認、保管など一連の作業を円滑化するソリューションだ。リリースから15年の歴史をもつ当サービスは、これまで大手ゼネコンを中心にシェア率を伸ばしてきたという。
最大の特徴は、ネットワーク上で情報を管理する点だ。WIZDOMのサーバ上にデータを保存すると、各関連業者のデバイス上のデータも自動的に更新されるため、サーバ内のデータは常に最新の状態に同期され、データのとりちがいや更新ミスによる時間のロスを未然に防ぐことができる。
その他押印機能や、回覧状態の閲覧、メールアプリを介した各担当者への承認書類のアナウンスなど、さまざまなオプション機能の利用も可能だ。同社の提供する「写真の達人」やクラウドストレージ「box」などのサービスと連携し、工事写真をWIZDOMのサーバ上で管理することも可能だ。
i-Constructionを加速させる技術の一つ、AIサービス。「Fast Label」では、AIサービスの機械学習に使用する教材データの作成・収集を専門アノテータ―に委託するアノテーションサービスと、ユーザー自身で作業ができるアノテーションプラットフォームを提供している。
アノテーションサービスの種類は大きく3タイプ。重機に設置したカメラの画像から、人・モノ・資材などの物体を検出し、重機の動作を制御する「重機の自立制御・無人化施行」、監視カメラの映像から、建設現場の安全性のチェックをタイムリーに把握する「安全監視」、図面の情報を検出し、材料費の算出や3D画像への変換を自動化する「建築図面作成」だ。
アノテーションプラットフォームを使えば、高品質な教師データを自社内で作成することができる。作業内容はいたってシンプル。ウェブブラウザ上で、AIサービスの目的に合った画像や動画データを選定し、クラス分けをしていけばいい。たとえば、バックホウの刃先や作業員の画像に、「建機」「危険箇所」「作業員」などのカテゴリ(属性情報)を付加していく。このようにクラス分けされた画像データ群が、AIの機械学習に使用する教師データとなるわけだ。
ユーザー自身がアノテーション作業をするメリットは、教師データの編集が手軽にできる点だろう。「安全監視」にAIソリューションを活用する場合、工事の進捗によって危険箇所は変わっていく。そのたびに外部業者に修正作業を依頼すると、時間や費用がかさんでしまうが、自社内で簡単に教師データを編集ができれば、工期に影響を及ぼすことなく、非常にスムーズだ。
ブラウザ上で簡単に編集ができるFastLabelによって、AIの専門知識や、ハイスペックなPCや専門ソフトウェア、長時間のアノテーション作業がすべて不要になった。アノテーション品質とコストの両立が実現したことで、AI活用の裾野を広げることだろう。
VRデバイスが並ぶ当ブースでは、VRとモーションセンサーを組み合わせた、「トレーニング」ソリューションが紹介されていた。ノーコードで没入型トレーニングコンテンツを開発できるツール「INTERACT」を使えば、作業現場や作業工程を反映させたオリジナルのトレーニングコンテンツを、簡単に作成することができる。
CADデータや3次元データのインポートや点群の高速処理に対応しているので、実際の現場を忠実に再現したトレーニングルームを作り出すことも可能だ。
モーションキャプチャーにも対応しているため、熟練作業員の手元作業の確認や新人作業員の技術の体得な、危険作業講習などの新人研修に多いに役立つだろう。
施工現場の効率化と同じく、バックオフィス業務の効率化も建設業界にとっては、重要な課題だ。2年連続シェアNo.1のクラウド人事労務ソフト「smart HR」は、入社手続きや雇用計画、月々の給与明細から年末調整まで、多岐にわたる労務手続きをすべてペーパーレスで行うというもの。年々建設会社の利用者が増加傾向にあるという。
社員の労務手続きをいかに円滑化するかは、担当者にとって喫緊の課題だろう。年末調整の書類ひとつをとっても、現場に出る技術者の書類を期日までに回収するので一苦労、という方もいるのではないだろうか。その点「smart HR」の年末調整手続きは、すべてオンライン上で完結するため非常にスマートだ。
専門知識がなくても必要事項を入力できる、わかりやすいUIを採用し、「はい/いいえ」等の簡単な質問に答えるだけで年末調整の書類が完成する。紙ベースの管理となると、書類作成や転記作業、役所への申請業務など、作業工数が非常に多くなるが、smart HRの場合、オンライン上で従業員が記載した情報をベースに、電子申請までを一元化できるため、転記や記載漏れなどのミスの防止にもつながる。
年末調整だけでなく、月々の給与明細などもオンライン上で発行できるため、月末や年末に増えがちな事務処理を簡略化。デスクワーク業務の負担が軽くなり、残業時間の削減につながるだろう。時間のかかる労務手続きから従業員を開放し、本当に必要な仕事に集中できる時間をつくる当サービスは、バックオフィスのみならず、事業所全体の生産性向上に役立つだろう。
土木・建設現場で発生する大量の残土。レンタル会社からダンプを借り、残土処理施設の調整など、残土の運搬にかかる事前作業は思いの外多い。また、多数の現場で工事を行っている場合、地域ごとに依頼先の業者も異なる。
現場ごとにダンプを必要台数確保するのも大変だろう。繁忙期等の影響で、たった一台のダンプを確保することも難しいケースもある。これらの手続きを、手軽にスマホで依頼できるサービスが、「DAMPOO」だ。
使い方は簡単。アプリケーションを立ち上げ、場所と日時と車両サイズを指定するだけで、残土処分の見積もり依頼が完了する。あとは、DANPOOオペレーターからの折返し連絡をもって、残土処理手配は完了だ。指定時間にダンプが到着し、残土を処理施設まで届けてくれる。
DAMPOOを利用することで蓄積される残土の発生場所と運搬先の履歴は、残土の追跡にも活用できる。再生利用可能な資源に該当する建築残土には、そのものを取り締まる法律が存在しないため、これまで、残土の発生場所や運搬先が明確化されない状態が野放しになっていた。しかし、2021年に発生した熱海土石流事件をうけて、国交省は、建設残土の発生場所からどこに運ばれたかを記録・追跡する「トレーサビリティ」制度導入にむけた方針を明らかにした。「残土を見える化」は、地域社会の安心・安全にもつながる。
DAMPOOは、現場の効率化だけでなく、業界内でグレーとされてきた残土問題をクリアにする、画期的なソリューションといえるだろう。現在は、大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県、岡山県で利用が可能だという。今後のサービスエリア拡大に期待したい。
【編集部 後記】
「建設DX展 -関西展-」では、様々な業務の効率化を支援するソリューションが多くみられた。i-Constructionや建設DXというと、どうしても測量や設計、施工などの建設プロセスをいかに効率化するかに焦点が行きだちだが、自社の小さな課題に目を向け、それをデジタルの力で解決するだけでも、立派なDX化と言えるだろう。
会場となったインテックス大阪には、連日多くの来場者が訪れ、製品の比較検討や技術相談などが盛んに行われていた。一つひとつのブースを訪れるうちに、“土木現場の生産性向上に貢献するソリューション”と一口にまとめることが難しいほど、さまざまな切り口をもつ製品が存在していることに、改めて気付かされた。そこで本記事では、数ある企業の中から、独自性の光る8つの出展ブースを紹介していく。
タワークレーンを遠隔操作するコックピット。竹中工務店の「Tawaremo」
一見、SF映画に出てきそうなこのプロダクトは、タワークレーンを遠隔で操作するためのコックピット「TawaRemo」だ。竹中工務店と鹿島建設、そしてアクティオとカナモト、4社共同で開発された「TawaRemo」を使えば、どこからでもタワークレーンの操作が可能になる。
コックピットには、クレーン頂部の運転席に設置された複数台のカメラ映像や、荷重などの動作信号や異常信号をリアルタイムで映し出すディスプレイが設置されており、オペレーターは画面を確認しながら、手元のレバーやフット・スイッチを使いクレーンを操作していく。タワークレーンに設置されたジャイロセンサーが振動や傾きを検知すると、まるでレーシングゲームのように、シートが連動して動く仕組みを採用しているため、現場で作業をしている感覚をリアルに体験しながら操作をすることができるそうだ。
現場からコックピットへのデータの転送はネットワークを介して行われるため、現場からどれほど離れていても、問題なく操作が可能だ。また、同一箇所に複数台のコックピットをまとめて設置することもできるという。たとえば、数名の若手オペレーターを熟練オペレーターが指導しながら、複数現場の作業を同時に行うことも可能だろう。
今後、5G回線への対応も検討しているとのこと。高速通信に対応することで、さらなる利便性の向上が期待できる。
建設ITワールド 家入龍太氏のユニークな企画!3D都市モデルの可能性をゲーム感覚で知る「プラトーで遊ぼう!」
約150インチの巨大スクリーンに映し出されているのは、国交省が主導となり開発された超大型規模の都市3DモデルPLATEAU(以下、プラトー)だ。
当ブースでは、株式会社アナザーブレイン、株式会社ホロラボ、そして大手建設設計事務所の有志建築家の協力のもと作成された「超低空フライトシミュレーター」や、建築ITワールド家入 龍太氏が作成した建造物のモデルをプラトー内に配置した「バーチャル大阪万博(夢洲)」、「ビル破壊ゲーム」など、プラトーを活用した遊び心あふれる3つの体験型コンテンツを展示。プラトーの特性を活かし、当コンテンツにはあらゆる都市情報が活用されていた。
たとえば、「超低空フライトシミュレーター」には、実際に大阪の街を歩いて調査した町並みや風景などの視覚情報がモデル内に反映されている。そのため、本来プラトー上では白いブロックで表現されるビル群を、3D画像のようなリアルな町並みとして楽しむことができるのだ。
また、パニック映画の怪獣気分で大阪のビル街を大胆に壊していく「ビル破壊ゲーム」では、BIM/CIMのようにビルの階数などの属性情報がマップ内に組み込まれている。その属性情報をもとに、合計で何階分のビルを破壊したかを集計し、採点される仕組みだ。ゲームの挑戦者がこぞって高得点を狙い、高層ビルを夢中で破壊する様子が印象的だった。
都市計画や防災など、行政利用のイメージが先行しがちなプラトーだが、ユニークな当ブースの展示をきっかけに、デジタルツインの新しい可能性を感じた来場者も多かったのではないだろうか。今後も建設業に限らず、商業やエンターテインメントなど、幅広い分野での活用を期待したい。
目的に合わせてCIMソフトウェアを拡張。維持・管理にも役立つ「CIMカスタマイズサービス」
2023年に予定されているBIM/CIMの原則適用に備え、BIM/CIM導入に向けた具体的な検討をはじめた事業者も多いのではないだろうか。
こちらのCAPAのブースではCIMをさらに便利に使いこなす、カスタマイズサービスが紹介されていた。構造物のチェックや積算・見積書の作成システム、図面ファイルの書き出し、プロジェクトチームの連絡・共有ツールや、進捗管理ツールなど、あらゆる業務フローをサポートするきめ細かな拡張サービスが展開されている。
たとえば「Civil 3D」は、現状の業務フローから課題を分析し、改善案を提案するサービスだ。進捗の確認と工事計画の見直しを綿密に行うことで、コスト削減や工期の短縮などにつながる。また、時間をかけて体得してきた『勘やコツ』など、属人化されていた技術をデータとして見える化し、分析することで、作業精度の向上に役立てることもを可能だという。
「施工管理」は、安心・安全面の維持・管理だけでなく、より効率的なコスト設計や、今後の設備投資計画、修繕計画の見直しなど、多面的な検証を可能にする拡張サービスだ。これらのカスタマイズサービスは、現在利用している他システムとの連携も可能。プロジェクトの内容にあわせてBIM/CIMをカスタマイズすることで、さらなる生産性の向上に役立てることができるだろう。
膨大な書類データを一元管理。データベース型施工情報共有システム「WIZDOM」
長期に渡る土木・建設工事には、膨大な書類処理業務がつきものだ。プロジェクトの規模が大きくなるほどプロジェクトメンバーが増え、情報共有や確認作業だけでもかなりの労力を要する。
株式会社アウトソーシングテクノロジーズが提供する施工情報共有システム「WIXDOM」は、膨大な書類やデータを一元化し、書類作成、書式変更、共有、申請・承認、保管など一連の作業を円滑化するソリューションだ。リリースから15年の歴史をもつ当サービスは、これまで大手ゼネコンを中心にシェア率を伸ばしてきたという。
最大の特徴は、ネットワーク上で情報を管理する点だ。WIZDOMのサーバ上にデータを保存すると、各関連業者のデバイス上のデータも自動的に更新されるため、サーバ内のデータは常に最新の状態に同期され、データのとりちがいや更新ミスによる時間のロスを未然に防ぐことができる。
その他押印機能や、回覧状態の閲覧、メールアプリを介した各担当者への承認書類のアナウンスなど、さまざまなオプション機能の利用も可能だ。同社の提供する「写真の達人」やクラウドストレージ「box」などのサービスと連携し、工事写真をWIZDOMのサーバ上で管理することも可能だ。
土木・建設現場における、AI活用をもっと身近にする。Fast Labelの「アノテーションプラットフォーム」
i-Constructionを加速させる技術の一つ、AIサービス。「Fast Label」では、AIサービスの機械学習に使用する教材データの作成・収集を専門アノテータ―に委託するアノテーションサービスと、ユーザー自身で作業ができるアノテーションプラットフォームを提供している。
アノテーションサービスの種類は大きく3タイプ。重機に設置したカメラの画像から、人・モノ・資材などの物体を検出し、重機の動作を制御する「重機の自立制御・無人化施行」、監視カメラの映像から、建設現場の安全性のチェックをタイムリーに把握する「安全監視」、図面の情報を検出し、材料費の算出や3D画像への変換を自動化する「建築図面作成」だ。
アノテーションプラットフォームを使えば、高品質な教師データを自社内で作成することができる。作業内容はいたってシンプル。ウェブブラウザ上で、AIサービスの目的に合った画像や動画データを選定し、クラス分けをしていけばいい。たとえば、バックホウの刃先や作業員の画像に、「建機」「危険箇所」「作業員」などのカテゴリ(属性情報)を付加していく。このようにクラス分けされた画像データ群が、AIの機械学習に使用する教師データとなるわけだ。
ユーザー自身がアノテーション作業をするメリットは、教師データの編集が手軽にできる点だろう。「安全監視」にAIソリューションを活用する場合、工事の進捗によって危険箇所は変わっていく。そのたびに外部業者に修正作業を依頼すると、時間や費用がかさんでしまうが、自社内で簡単に教師データを編集ができれば、工期に影響を及ぼすことなく、非常にスムーズだ。
ブラウザ上で簡単に編集ができるFastLabelによって、AIの専門知識や、ハイスペックなPCや専門ソフトウェア、長時間のアノテーション作業がすべて不要になった。アノテーション品質とコストの両立が実現したことで、AI活用の裾野を広げることだろう。
新人研修にVRを活用。トレーニングコンテンツ開発ツール「INTERACT」
VRデバイスが並ぶ当ブースでは、VRとモーションセンサーを組み合わせた、「トレーニング」ソリューションが紹介されていた。ノーコードで没入型トレーニングコンテンツを開発できるツール「INTERACT」を使えば、作業現場や作業工程を反映させたオリジナルのトレーニングコンテンツを、簡単に作成することができる。
CADデータや3次元データのインポートや点群の高速処理に対応しているので、実際の現場を忠実に再現したトレーニングルームを作り出すことも可能だ。
モーションキャプチャーにも対応しているため、熟練作業員の手元作業の確認や新人作業員の技術の体得な、危険作業講習などの新人研修に多いに役立つだろう。
労務管理をペーパーレス化。「Smart HR」で、バックオフィス業務を効率化
施工現場の効率化と同じく、バックオフィス業務の効率化も建設業界にとっては、重要な課題だ。2年連続シェアNo.1のクラウド人事労務ソフト「smart HR」は、入社手続きや雇用計画、月々の給与明細から年末調整まで、多岐にわたる労務手続きをすべてペーパーレスで行うというもの。年々建設会社の利用者が増加傾向にあるという。
社員の労務手続きをいかに円滑化するかは、担当者にとって喫緊の課題だろう。年末調整の書類ひとつをとっても、現場に出る技術者の書類を期日までに回収するので一苦労、という方もいるのではないだろうか。その点「smart HR」の年末調整手続きは、すべてオンライン上で完結するため非常にスマートだ。
専門知識がなくても必要事項を入力できる、わかりやすいUIを採用し、「はい/いいえ」等の簡単な質問に答えるだけで年末調整の書類が完成する。紙ベースの管理となると、書類作成や転記作業、役所への申請業務など、作業工数が非常に多くなるが、smart HRの場合、オンライン上で従業員が記載した情報をベースに、電子申請までを一元化できるため、転記や記載漏れなどのミスの防止にもつながる。
年末調整だけでなく、月々の給与明細などもオンライン上で発行できるため、月末や年末に増えがちな事務処理を簡略化。デスクワーク業務の負担が軽くなり、残業時間の削減につながるだろう。時間のかかる労務手続きから従業員を開放し、本当に必要な仕事に集中できる時間をつくる当サービスは、バックオフィスのみならず、事業所全体の生産性向上に役立つだろう。
スマホでダンプが呼べる!残土処分問題をクリアにする「DAMPOO」
土木・建設現場で発生する大量の残土。レンタル会社からダンプを借り、残土処理施設の調整など、残土の運搬にかかる事前作業は思いの外多い。また、多数の現場で工事を行っている場合、地域ごとに依頼先の業者も異なる。
現場ごとにダンプを必要台数確保するのも大変だろう。繁忙期等の影響で、たった一台のダンプを確保することも難しいケースもある。これらの手続きを、手軽にスマホで依頼できるサービスが、「DAMPOO」だ。
使い方は簡単。アプリケーションを立ち上げ、場所と日時と車両サイズを指定するだけで、残土処分の見積もり依頼が完了する。あとは、DANPOOオペレーターからの折返し連絡をもって、残土処理手配は完了だ。指定時間にダンプが到着し、残土を処理施設まで届けてくれる。
DAMPOOを利用することで蓄積される残土の発生場所と運搬先の履歴は、残土の追跡にも活用できる。再生利用可能な資源に該当する建築残土には、そのものを取り締まる法律が存在しないため、これまで、残土の発生場所や運搬先が明確化されない状態が野放しになっていた。しかし、2021年に発生した熱海土石流事件をうけて、国交省は、建設残土の発生場所からどこに運ばれたかを記録・追跡する「トレーサビリティ」制度導入にむけた方針を明らかにした。「残土を見える化」は、地域社会の安心・安全にもつながる。
DAMPOOは、現場の効率化だけでなく、業界内でグレーとされてきた残土問題をクリアにする、画期的なソリューションといえるだろう。現在は、大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県、岡山県で利用が可能だという。今後のサービスエリア拡大に期待したい。
【編集部 後記】
「建設DX展 -関西展-」では、様々な業務の効率化を支援するソリューションが多くみられた。i-Constructionや建設DXというと、どうしても測量や設計、施工などの建設プロセスをいかに効率化するかに焦点が行きだちだが、自社の小さな課題に目を向け、それをデジタルの力で解決するだけでも、立派なDX化と言えるだろう。
WRITTEN by
高橋 奈那
神奈川県生まれのコピーライター。コピーライター事務所アシスタント、広告制作会社を経て、2020年より独立。企画・構成からコピーライティング・取材執筆など、ライティング業務全般を手がける。学校法人や企業の発行する広報誌やオウンドメディアといった、広告主のメッセージをじっくり伝える媒体を得意とする。