本州最北端に位置する青森県は、北側は陸奥湾から津軽海峡へ、東側は太平洋、西側は日本海に囲まれており、南側は秋田県と岩手県に接するという特色ある立地の県だ。
内陸には、大岳を主峰とした八甲田山、県内随一の標高を誇る岩木山、県南西部から秋田県にかけては白神山地、さらには広大な平野、丘陵地、河川など、多様な地形が広がっている。
青森県で活躍する土木・建設会社は、こうした地形に加え、季節風や、厳しい冬に備えた寒冷地建設技術、雪対策、凍害対策など、自然環境の特性を十分に理解し、建設計画や現場での作業に反映している。
また青森県は、建設業の担い手確保に県をあげて力を注いでいる。
2024年7月には、建設業に関心を持つ人に向けて、青森県建設業就職相談窓口「チカラコブ」を開設した。
総合建設業、大工やとびといった専門工事業のそれぞれに対応しており、訪問や電話などで相談をすることができる。
チカラコブの求人サイトでは、土木と建築、さらに除雪や災害復旧を事業領域とするのが青森県内での建設業の仕事であるという解説など、具体的な求人以外の情報発信も行っている。
本記事では、青森県の総合土木・建設業界をリードする15社を紹介する。
各社の歴史、特徴的な技術、代表的なプロジェクト、そして最新の取り組みなどを詳しく見ていこう。
1912年、大工であった創業者・阿部重吉が興した阿部重組は、総合建設業からさらにステップアップし、多様化する要望にも総合的に対応することができる“建設サービス業”への進化を目指す企業だ。
新築工事では、青森空港旅客ターミナルビル、新青森駅駅舎、青森県観光物産館、青森市役所駅前庁舎など、青森の顔ともいえる建築を数多く担当している。
1879年に創業した穂積建設工業は、明治から令和までの5つの時代を通して、青森県の土木・建設業を支えてきた。
完成工事高は50億円で、主な受注先は国土交通省、青森県、八戸市と、公共事業を数多く手掛けており、「八戸まちなか広場マチニワ」など八戸市を象徴する建築実績も多い。
2019年には、建設現場の生産性向上を図るために創設された「みちのくi-Construction奨励賞」において、八戸階上線橋梁補修(湊橋)工事でのハンディ型3Dスキャナーによる測定データの活用などの取り組みが評価され、地方公共団体部門を受賞している注目の老舗企業だ。
丸井重機建設は1949年に丸井組として創業し、土木工事請負業、砂利採取業から事業をスタートさせた。
1952年には丸井建設株式会社に改組、その後、1973年に丸井重機株式会社と合併して現在に至る。
1978年には、当時国内最大級であった大型パイルドライバー(杭打機)D508-95Mを導入するなど、昭和の時代から、国内の土木・建築業界の最先端をいく企業として歩みを進めてきた。
事業は、公共建築や一般住宅、ホテルや事務所などを手掛ける建築部門と、河川や公園などの設計・施工を幅広く行う土木部門、岩盤削孔・地中障害物・既存杭撤去をはじめとする工事を行う基礎部門に分かれる。
施工事例には、青森県原子力センター新築工事、上北郡での太平洋地区水産環境整備工事などがある。
2023年には、土木工事の施工が優秀であるとして、国土交通省東北地方整備局より工事成績優秀企業に認定されている。
田中建設は、1933年の創業期に柱とした土木事業をはじめ、青森県の自然環境と調和した次世代の街づくりに取り組む建設事業、老朽化したインフラの修繕・補修によって災害から街を守る環境保全事業を展開している。
青森県内の外舗装工事や道路改良工事などでは、ICTを活用した施工にも積極的に取り組んでいる。
例えば、設計図面の電子データとGNSSなどの位置情報をリンクさせて目視管理できる情報を増やしたり、タブレットを活用してオペレーターと監理者が情報を共有しながら施工できる環境の整備などを行っている。
こうした取り組みにより、2021年には、東北地方整備局青森河川国道事務所がICT地盤改良工事の現場見学にも訪れるなど、ICT導入の先端をいく企業のひとつとして注目されている。
建設事業の主な工事実績としては、青森地家裁十和田支部庁舎建築工事、十和田市中央病院建設工事などがある。
「誠意・郷土愛・技術創造・企業性・協力」を社訓とする福萬組は、「ワクワクする地域社会を建設し続ける斬新な建設会社」を掲げる企業。
創業は1950年、売上高は55.6億円と、青森県を代表する歴史と規模感を持つ建設会社のひとつだ。
公共施設、教育施設、医療施設、オフィス、工場など、幅広い建築物の設計・施工・メンテナンスを一貫して行っている。
最新の施工事例としては、十和田済誠会病院移転新築工事の建設工事、国道279号道路改良工事などがある。
地域貢献にも力を注いでおり、2024年には、「あおもり産木材活用建築コンテスト」で廃業したガソリンスタンドをリノベーションした施工事例が審査員特別賞を受賞したほか、県内の高等技術専門校を訪問し、建築業をPRするプレゼンにも取り組んでいる。
ホリエイは、総合建設でありながら、水産会社でもあるという青森県らしい特色のある企業だ。漁業部ではマグロの定置網漁を行っており、自社の水産加工センターを経て、青森県産マグロを全国へ出荷している。
土木・建設事業としては、環境に優しい活動を念頭に、公共事業から一般土木事業まで幅広く対応している。
最新かつ最適な工法の採用を掲げており、具体的な施工事例としては、十二湖海岸環境整備事業工事、深浦町農水産物一次加工場新築工事などがある。
1948年に蛯沢組として創業以来、土木・建築を中心に、地域の総合建設業者として実績を重ねてきた。
1級土木施工管理技士18名を筆頭に、建設機械施工技士、建築士、管工事施工管理技士、造園施工管理技士、解体工事施工管理技士など、80名以上の関連資格取得者が在籍している。
環境や社会への貢献を通して、地域と共生・共栄する企業を目指しており、CSRにも力を注いでいる。
例えば、安全への取り組みとして、日常的な安全パトロールなどに加え、年に一度、全職員、グループ会社、協力会社、職人たちを集め、外部講師による講和やパネルディスカッションを行う「安全教育」を行っている。
また、建設業であることを活かし、青森県建設業協会を通じて「大規模災害時における応急対策業務に関する協定」を結ぶなど、地域の安心・安全な暮らしを守るという役割を担っている。
相互建設工業は、1971年に相互木材として創業し、3年後の1974年に建築工事をスタート。
その後、現在まで、公共工事をはじめ、福祉施設、教育施設、企業などの民間工事も広く対応している企業だ。
建築工事の事例としては、海上自衛隊八戸駐屯地の外壁補修工事や、建設工事共同企業体の一員として行った青森県内中学校の屋内運動場改築工事などがある。
土木工事では、人と自然をともに保全する環境貢献型企業を目指しており、工事事例には、青森市内の配水管更新工事、融流雪溝整備工事などがある。
今年、2024年に創業100周年を迎えた田名部組は、創業者・田名部政次郎が大工として建設業に参画したことからはじまった。
「建設業の新たな境地創造」を掲げ、建築、造成、再生可能エネルギー、不動産企画の各事業に取り組む企業だ。
多発する災害により、安定したライフラインや強固な防災システムの構築が求められている状況を前に、この先、「土木の有り方が激的に多様化する」という考えに基づいた事業展開を行なっている。
象徴的なのが、再生可能自然エネルギーによる発電所の建設だ。さらに、風力発電所、太陽光発電所の保守点検やメンテナンスにも積極的に取り組むなど、自然を相手にした壮大なプロジェクトを主な事業内容としている。
現場では、自動操舵ブルドーザーやドローン、VRなど、現場のICT化を進めており、青森県の建設業界に特化した求人情報サイト「チカラコブ」のYoutubeでは、県知事が田名部組の現場を訪れて最新技術を体験する企画も配信されている。
田中組は、1928年に設立され、青森県の総合建設会社として成長を続けてきた。
設立当初から事業の柱としてきた土木工事の技術をさらに発展させ、現在では、土木・建築工事の全般を行う総合建設会社となっている。
完工高50億円と、完工高ランクでは県内トップ10の実績を誇る青森県を代表する企業のひとつだ。
田中組では、建設生産プロセスのさまざまな場面で全面的にICT技術の活用に取り組んでいる。
具体的には、3次元起工測量・3次元設計データ作成、ICT建機による施工、3次元出来形管理等の施工管理、3次元データの納品などを通して、現場の生産性を向上させ、高齢化などによる労働力の大幅減少に備え、建築現場が社会的使命を果たしていける環境整備を進めている。
「人類・社会の進歩発展に貢献する」を経営理念として、1965年に創業した石上建設は、1989年には一級建築士事務所を併設し、その後も総合建設業者として青森県内のインフラ整備、公共施設の新築工事などに貢献を続けてきた。
土木工事では、道路、下水道、橋梁、河川工事など、多岐に渡る公共土木工事の施工を手がけている。
地域への貢献として、事業だけに留まらず、「青森県ふるさとの水辺サポーター」、八戸市が行う「はちのへクリーンパートナー」に登録し、職員たちが定期的に地域の清掃活動を行なっている。
1923年に創業した鹿内組は、“住みよい郷土を創る”を理念に掲げ、地域密着の事業に取り組む企業だ。
建設業をはじめ、一級建築士事務所、宅地建物取引業を事業内容としているほか、PPP(官民連携)の仕組みにより、新青森県総合運動公園、青森県総合運動公園の「PFI青い森維持運営業務」も行っていることが特徴といえる。
技術面では、新しい外付け耐震補強工法であるピタコラム工法、粘性土からの滞水砂層などに対応した最新鋭工法であるスリムアーク工法など、新しい工法を多数導入している。
青森県八戸市に東日本事業部を置く三菱製紙エンジニアリングは、三菱製紙グループの総合エンジニアリング会社だ。
1967年に株式会社時田商店として設立し、1988年に三菱製紙株式会社の100%出資会社となった。
一般的な土木工事、建築工事から、プラントの設計・施工・販売なども行っている。
特に、連続流体理論に基づいて独自に設計したリューキ撹拌機は、低速回転領域において強力な撹拌流を生み出すことができ、熟成に必要な均一な撹拌を維持できるとして、さまざまな現場への導入を推めている。
1941年に創業した大坂組は、「地域に快適な環境を提供する」ことを使命に、一般土木、建築に加え、運送、ドローン、道路保全・除雪の事業も展開している。
一般土木、建築事業においては、職人の技術とあわせ、ICT施工を積極的に取り入れていることが特徴だ。
例えば、空中ドローンによる現場の空撮や3次元測量、さらには水中ドローンによる定置網、養殖等調査、海洋生物調査、船底調査なども行っている。
現場でのノウハウを活かしたドローン事業では、撮影やドローンの販売に加え、2021年に「大坂組・ドローンスクール青森校」「大坂組・水中ドローンスクール青森校」を開校し、操縦士の育成にも取り組んでいる。
また、開校をきっかけとして、小学生を対象とした水中ドローン体験会を開き、地域の子どもたちが海の環境維持や最先端の技術について知る機会をつくっている。
キタコンは、1962年に青森県初の建設コンサルタントとして創業した。弘前エリアにおいて、“社会インフラのお医者さん”を目指し、社会インフラ整備の一端を担っている。
事業内容は、道路概略・予備・詳細設計、治水・利水計画、新設橋梁の計画・設計、農業用排水路の設計、地質調査、UAVレーザー三次元測量など多岐に渡る。
コンサルタントという立場から、最新ICTの活用にも精力的だ。BIM/CIM導入に向けて、レーザースキャナ、三次元CAD、VR、GISなどの各種技術の採用を進めている。
また、DXの推進においては、ウェブ検査の活用、調査業務などでの遠隔臨場の施行、VRによる現場の三次元モデル化などに取り組んでいる。
キタコンは、東北復興DX・i-Construction連絡調整会議によって「ICTサポーター」の認定を受けており、個別の地域建設企業単位ではスピーディーに対応しきれないデジタル化を実現できるよう、豊富な実務経験とノウハウをさまざまな現場に反映している。
内陸には、大岳を主峰とした八甲田山、県内随一の標高を誇る岩木山、県南西部から秋田県にかけては白神山地、さらには広大な平野、丘陵地、河川など、多様な地形が広がっている。
青森県で活躍する土木・建設会社は、こうした地形に加え、季節風や、厳しい冬に備えた寒冷地建設技術、雪対策、凍害対策など、自然環境の特性を十分に理解し、建設計画や現場での作業に反映している。
また青森県は、建設業の担い手確保に県をあげて力を注いでいる。
2024年7月には、建設業に関心を持つ人に向けて、青森県建設業就職相談窓口「チカラコブ」を開設した。
総合建設業、大工やとびといった専門工事業のそれぞれに対応しており、訪問や電話などで相談をすることができる。
チカラコブの求人サイトでは、土木と建築、さらに除雪や災害復旧を事業領域とするのが青森県内での建設業の仕事であるという解説など、具体的な求人以外の情報発信も行っている。
本記事では、青森県の総合土木・建設業界をリードする15社を紹介する。
各社の歴史、特徴的な技術、代表的なプロジェクト、そして最新の取り組みなどを詳しく見ていこう。
1.阿部重組
1912年、大工であった創業者・阿部重吉が興した阿部重組は、総合建設業からさらにステップアップし、多様化する要望にも総合的に対応することができる“建設サービス業”への進化を目指す企業だ。
新築工事では、青森空港旅客ターミナルビル、新青森駅駅舎、青森県観光物産館、青森市役所駅前庁舎など、青森の顔ともいえる建築を数多く担当している。
2.穂積建設工業
1879年に創業した穂積建設工業は、明治から令和までの5つの時代を通して、青森県の土木・建設業を支えてきた。
完成工事高は50億円で、主な受注先は国土交通省、青森県、八戸市と、公共事業を数多く手掛けており、「八戸まちなか広場マチニワ」など八戸市を象徴する建築実績も多い。
2019年には、建設現場の生産性向上を図るために創設された「みちのくi-Construction奨励賞」において、八戸階上線橋梁補修(湊橋)工事でのハンディ型3Dスキャナーによる測定データの活用などの取り組みが評価され、地方公共団体部門を受賞している注目の老舗企業だ。
3.丸井重機建設
丸井重機建設は1949年に丸井組として創業し、土木工事請負業、砂利採取業から事業をスタートさせた。
1952年には丸井建設株式会社に改組、その後、1973年に丸井重機株式会社と合併して現在に至る。
1978年には、当時国内最大級であった大型パイルドライバー(杭打機)D508-95Mを導入するなど、昭和の時代から、国内の土木・建築業界の最先端をいく企業として歩みを進めてきた。
事業は、公共建築や一般住宅、ホテルや事務所などを手掛ける建築部門と、河川や公園などの設計・施工を幅広く行う土木部門、岩盤削孔・地中障害物・既存杭撤去をはじめとする工事を行う基礎部門に分かれる。
施工事例には、青森県原子力センター新築工事、上北郡での太平洋地区水産環境整備工事などがある。
2023年には、土木工事の施工が優秀であるとして、国土交通省東北地方整備局より工事成績優秀企業に認定されている。
4.田中建設
田中建設は、1933年の創業期に柱とした土木事業をはじめ、青森県の自然環境と調和した次世代の街づくりに取り組む建設事業、老朽化したインフラの修繕・補修によって災害から街を守る環境保全事業を展開している。
青森県内の外舗装工事や道路改良工事などでは、ICTを活用した施工にも積極的に取り組んでいる。
例えば、設計図面の電子データとGNSSなどの位置情報をリンクさせて目視管理できる情報を増やしたり、タブレットを活用してオペレーターと監理者が情報を共有しながら施工できる環境の整備などを行っている。
こうした取り組みにより、2021年には、東北地方整備局青森河川国道事務所がICT地盤改良工事の現場見学にも訪れるなど、ICT導入の先端をいく企業のひとつとして注目されている。
建設事業の主な工事実績としては、青森地家裁十和田支部庁舎建築工事、十和田市中央病院建設工事などがある。
5.福萬組
「誠意・郷土愛・技術創造・企業性・協力」を社訓とする福萬組は、「ワクワクする地域社会を建設し続ける斬新な建設会社」を掲げる企業。
創業は1950年、売上高は55.6億円と、青森県を代表する歴史と規模感を持つ建設会社のひとつだ。
公共施設、教育施設、医療施設、オフィス、工場など、幅広い建築物の設計・施工・メンテナンスを一貫して行っている。
最新の施工事例としては、十和田済誠会病院移転新築工事の建設工事、国道279号道路改良工事などがある。
地域貢献にも力を注いでおり、2024年には、「あおもり産木材活用建築コンテスト」で廃業したガソリンスタンドをリノベーションした施工事例が審査員特別賞を受賞したほか、県内の高等技術専門校を訪問し、建築業をPRするプレゼンにも取り組んでいる。
6.ホリエイ
ホリエイは、総合建設でありながら、水産会社でもあるという青森県らしい特色のある企業だ。漁業部ではマグロの定置網漁を行っており、自社の水産加工センターを経て、青森県産マグロを全国へ出荷している。
土木・建設事業としては、環境に優しい活動を念頭に、公共事業から一般土木事業まで幅広く対応している。
最新かつ最適な工法の採用を掲げており、具体的な施工事例としては、十二湖海岸環境整備事業工事、深浦町農水産物一次加工場新築工事などがある。
7.東北建設
1948年に蛯沢組として創業以来、土木・建築を中心に、地域の総合建設業者として実績を重ねてきた。
1級土木施工管理技士18名を筆頭に、建設機械施工技士、建築士、管工事施工管理技士、造園施工管理技士、解体工事施工管理技士など、80名以上の関連資格取得者が在籍している。
環境や社会への貢献を通して、地域と共生・共栄する企業を目指しており、CSRにも力を注いでいる。
例えば、安全への取り組みとして、日常的な安全パトロールなどに加え、年に一度、全職員、グループ会社、協力会社、職人たちを集め、外部講師による講和やパネルディスカッションを行う「安全教育」を行っている。
また、建設業であることを活かし、青森県建設業協会を通じて「大規模災害時における応急対策業務に関する協定」を結ぶなど、地域の安心・安全な暮らしを守るという役割を担っている。
8.相互建設工業
相互建設工業は、1971年に相互木材として創業し、3年後の1974年に建築工事をスタート。
その後、現在まで、公共工事をはじめ、福祉施設、教育施設、企業などの民間工事も広く対応している企業だ。
建築工事の事例としては、海上自衛隊八戸駐屯地の外壁補修工事や、建設工事共同企業体の一員として行った青森県内中学校の屋内運動場改築工事などがある。
土木工事では、人と自然をともに保全する環境貢献型企業を目指しており、工事事例には、青森市内の配水管更新工事、融流雪溝整備工事などがある。
9.田名部組
今年、2024年に創業100周年を迎えた田名部組は、創業者・田名部政次郎が大工として建設業に参画したことからはじまった。
「建設業の新たな境地創造」を掲げ、建築、造成、再生可能エネルギー、不動産企画の各事業に取り組む企業だ。
多発する災害により、安定したライフラインや強固な防災システムの構築が求められている状況を前に、この先、「土木の有り方が激的に多様化する」という考えに基づいた事業展開を行なっている。
象徴的なのが、再生可能自然エネルギーによる発電所の建設だ。さらに、風力発電所、太陽光発電所の保守点検やメンテナンスにも積極的に取り組むなど、自然を相手にした壮大なプロジェクトを主な事業内容としている。
現場では、自動操舵ブルドーザーやドローン、VRなど、現場のICT化を進めており、青森県の建設業界に特化した求人情報サイト「チカラコブ」のYoutubeでは、県知事が田名部組の現場を訪れて最新技術を体験する企画も配信されている。
10.田中組
田中組は、1928年に設立され、青森県の総合建設会社として成長を続けてきた。
設立当初から事業の柱としてきた土木工事の技術をさらに発展させ、現在では、土木・建築工事の全般を行う総合建設会社となっている。
完工高50億円と、完工高ランクでは県内トップ10の実績を誇る青森県を代表する企業のひとつだ。
田中組では、建設生産プロセスのさまざまな場面で全面的にICT技術の活用に取り組んでいる。
具体的には、3次元起工測量・3次元設計データ作成、ICT建機による施工、3次元出来形管理等の施工管理、3次元データの納品などを通して、現場の生産性を向上させ、高齢化などによる労働力の大幅減少に備え、建築現場が社会的使命を果たしていける環境整備を進めている。
11.石上建設
「人類・社会の進歩発展に貢献する」を経営理念として、1965年に創業した石上建設は、1989年には一級建築士事務所を併設し、その後も総合建設業者として青森県内のインフラ整備、公共施設の新築工事などに貢献を続けてきた。
土木工事では、道路、下水道、橋梁、河川工事など、多岐に渡る公共土木工事の施工を手がけている。
地域への貢献として、事業だけに留まらず、「青森県ふるさとの水辺サポーター」、八戸市が行う「はちのへクリーンパートナー」に登録し、職員たちが定期的に地域の清掃活動を行なっている。
12.鹿内組
1923年に創業した鹿内組は、“住みよい郷土を創る”を理念に掲げ、地域密着の事業に取り組む企業だ。
建設業をはじめ、一級建築士事務所、宅地建物取引業を事業内容としているほか、PPP(官民連携)の仕組みにより、新青森県総合運動公園、青森県総合運動公園の「PFI青い森維持運営業務」も行っていることが特徴といえる。
技術面では、新しい外付け耐震補強工法であるピタコラム工法、粘性土からの滞水砂層などに対応した最新鋭工法であるスリムアーク工法など、新しい工法を多数導入している。
13. 三菱製紙エンジニアリング
青森県八戸市に東日本事業部を置く三菱製紙エンジニアリングは、三菱製紙グループの総合エンジニアリング会社だ。
1967年に株式会社時田商店として設立し、1988年に三菱製紙株式会社の100%出資会社となった。
一般的な土木工事、建築工事から、プラントの設計・施工・販売なども行っている。
特に、連続流体理論に基づいて独自に設計したリューキ撹拌機は、低速回転領域において強力な撹拌流を生み出すことができ、熟成に必要な均一な撹拌を維持できるとして、さまざまな現場への導入を推めている。
14.大坂組
1941年に創業した大坂組は、「地域に快適な環境を提供する」ことを使命に、一般土木、建築に加え、運送、ドローン、道路保全・除雪の事業も展開している。
一般土木、建築事業においては、職人の技術とあわせ、ICT施工を積極的に取り入れていることが特徴だ。
例えば、空中ドローンによる現場の空撮や3次元測量、さらには水中ドローンによる定置網、養殖等調査、海洋生物調査、船底調査なども行っている。
現場でのノウハウを活かしたドローン事業では、撮影やドローンの販売に加え、2021年に「大坂組・ドローンスクール青森校」「大坂組・水中ドローンスクール青森校」を開校し、操縦士の育成にも取り組んでいる。
また、開校をきっかけとして、小学生を対象とした水中ドローン体験会を開き、地域の子どもたちが海の環境維持や最先端の技術について知る機会をつくっている。
15.キタコン
キタコンは、1962年に青森県初の建設コンサルタントとして創業した。弘前エリアにおいて、“社会インフラのお医者さん”を目指し、社会インフラ整備の一端を担っている。
事業内容は、道路概略・予備・詳細設計、治水・利水計画、新設橋梁の計画・設計、農業用排水路の設計、地質調査、UAVレーザー三次元測量など多岐に渡る。
コンサルタントという立場から、最新ICTの活用にも精力的だ。BIM/CIM導入に向けて、レーザースキャナ、三次元CAD、VR、GISなどの各種技術の採用を進めている。
また、DXの推進においては、ウェブ検査の活用、調査業務などでの遠隔臨場の施行、VRによる現場の三次元モデル化などに取り組んでいる。
キタコンは、東北復興DX・i-Construction連絡調整会議によって「ICTサポーター」の認定を受けており、個別の地域建設企業単位ではスピーディーに対応しきれないデジタル化を実現できるよう、豊富な実務経験とノウハウをさまざまな現場に反映している。
WRITTEN by
國廣 愛佳
創業支援や地域活性を行う都内のまちづくり会社に勤務後、2019年よりフリーランス。紙面やwebサイトの編集、インタビューやコピーライティングなどの執筆を中心に、ジャンルを問わず活動。四国にある築100年の実家をどう生かすかが長年の悩み。